2019 Fiscal Year Research-status Report
NSAIDs起因性小腸傷害における好中球細胞外トラップの役割と診断・治療法確立
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19K08474
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
渡邉 俊雄 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (50336773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
灘谷 祐二 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (00634007)
大谷 恒史 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30597555)
谷川 徹也 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70423879)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 好中球 / 小腸傷害 / シトルリン化ヒストン / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ラットまたはマウスに、indomethacin (IND, 10 mg/kg)を経口投与して小腸傷害を惹起した。 1)ラットにINDを投与すると、肉眼的な小腸病変はIND投与3時間後より形成され、24時間後にピークに達した。組織学的には、3時間後より上皮の剥離、炎症細胞浸潤が認められた。6時間後以降は、明らかな潰瘍が形成され、炎症細胞浸潤は更に顕著になった。 2)好中球浸潤を評価するために小腸組織中のmyeloperoxidase活性を測定したところ、IND投与後3時間後から上昇がみられ、6時間以降は有意となり24時間後にピークに達した。一方、好中球浸潤を誘導するtumor necrosis factor-αやinterleukin-1βなどの炎症性サイトカインもIND投与6時間以降に有意な発現増加が認められた。さらに、好中球抗体により好中球が欠乏したラットでは、IND投与後の肉眼的病変が約80%抑制されたことから、本傷害は好中球依存性であると考えられた。 なお、これらの組織学的変化ならびに炎症性反応の増強は、INDをマウスに投与した場合でもほぼ同様に認められた。 3)本傷害発生過程において、好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)が認められるか否かの検討をIND投与後のマウス小腸を用いて、蛍光免疫二重染色法で評価した。用いた抗体は末梢好中球のマーカータンパク質に対する抗体である抗Ly6G抗体と、NETs形成時産生されるシトルリン化ヒストンに対する抗体である抗CitH3抗体である。その結果、IND投与6時間後の小腸粘膜では、浸潤した好中球の多くが抗H3CitH3抗体で陽性であった。すなわち、本傷害の発症過程においてNETsが形成されていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床症例の集積については予定よりも遅れているが、基礎研究については比較的順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は以下の検討を行う予定である。 1)令和元年度の検討において、NSAIDs起因性小腸傷害の発症時にNETs形成が確認されたことから、NETsの本傷害における意義をマウスを用いて行う。PAD4阻害薬であるCl-amidineおよびNETsを分解するDNase (DNase 1) の前投与、さらにPAD4ノックアウトマウスを用いて、NETs抑制により傷害が増悪するか軽減するかを検討する。肉眼的な傷害の評価だけでなく、組織学的あるいは免疫組織学的な検討を行う。 2)NETs形成の抑制が、傷害の程度だけでなく、炎症性サイトカインやNLRP3インフラマソームの発現や活性化に及ぼす影響を検討する。 3)NETs形成は様々なNETs成分の血中への遊離を伴う。この中で、NETsに特異性が高い分子としてcell-free DNA、Cit-H3ならびにMPO-DNA複合体を傷害惹起後のマウス検体を用いてELISA法により測定する。 4)NSAIDs服用関節リウマチ患者の血中抗シトルリン化蛋白(抗CCP)抗体の有無(または抗体価)と、カプセル内視鏡で評価した小腸傷害重症度との相関を検討するために症例を蓄積する。
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Causes of Carryover |
研究が当初の予定よりも少し遅れたため、高額な試薬やノックアウトマウスを購入しなかったため。令和2年度はこれらの購入する予定である。
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