2021 Fiscal Year Annual Research Report
急性肝不全救命に向けた成熟肝細胞の至適増殖環境の解明
Project/Area Number |
19K08475
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
滝川 康裕 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50254751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 悠地 岩手医科大学, 医学部, 特任講師 (00779332)
柿坂 啓介 岩手医科大学, 医学部, 講師 (40583563)
王 挺 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 特任講師 (70416171)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性肝不全 / 肝再生不全 / 細胆管反応 / 血管内皮細胞増殖因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性肝不全患者37検体の保存血漿を対象に、ヒトサイトカインスクーニングパネルで同定したInterleukin(IL)-8について、マウス成熟肝細胞株(AML12)と肝前駆細胞(LPC)および胆管細胞株(603B)の増殖能に及ぼす影響を解析した。IL-8のmouse homologueである、KC、MIP-2はAML12の増殖を抑制する一方で、LPCの増殖を促進した。また、ヒト急性肝障害患者の肝生検組織の解析では、肝生検時にIL-8が高値であったことを確認した症例で、肝細胞マーカーであるHNF4αとSOX9両陽性の細胞が増加していることが明らかとなった。この結果は、IL-8に代表される肝局所の炎症が細胆管反応を惹起していることを示している。 さらに、ヒト肝不全病理組織では、増生した細胆管周囲にCD31陽性の脈管構造の増加も確認されたことから、肝組織修復の環境として、上皮細胞のみならず、血管構築の修復過程も密接に関連していると考え、動物実験で形態解析を行った。細胆管反応モデルとしてDDC投与マウスを用いて、臓器透明化手法と免疫組織化学染色を組み合わせ、3次元的構造解析を行った。その結果、新生胆管にはCD31陽性の新生血管が伴走し、しかも、VEGFR-2受容体阻害を用いて血管新生を抑制すると細胆管増生も抑制されることが明らかとなった。以上の結果は、肝障害モデルマウスの肝細胞障害部位に細胆管と栄養血管が協調して増生していることを支持する所見と考えられる。 近年、急性肝不全における細胆管反応は、肝組織破壊に伴って生じた胆汁流出障害に対する機能代償反応との見方が示されている。本研究は、細胆管反応が局所の炎症反応によって惹起される一方で、新生血管構築と綿密に連動して組織修復に動いていることを示唆している。一連の研究の最終目的である、人工肝補助による至適増殖環境の達成に向けて、その標的分子(炎症性サイトカイン、血管増殖因子)の解明に前進が見られた。
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