2020 Fiscal Year Research-status Report
トリプシン異所性活性化におけるRab7の役割と急性膵炎発症のメカニズムの解明
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19K08476
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
眞嶋 浩聡 自治医科大学, 医学部, 教授 (10261869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Rab7 / 急性膵炎 / トリプシン / オートファジー / エキソサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、Rab7ノックアウト(KO)マウスを用いて、Rab7がオートファジーに関与していること、実験的急性膵炎モデルにおいてRab7が存在しないとオートファジー不全が高じ、膵炎が増悪することを明らかにした(Scientific Reports 2017)。その過程で、実験的膵炎の中でもセルレイン膵炎を発症させた時にのみ、Rab7 KOマウスの膵内でトリプシンが爆発的に活性化することを発見した。Rab7は細胞内小胞の膜上に存在し、オートファジー以外にもエンドサイトーシスにも関与していることが知られている。そこで、我々はRab7がエキソサイトーシスにも関与しているのではないかと仮説を立てた。セルレインはコレシストキニン(CCK)のアナログであり、セルレイン膵炎は過剰の分泌刺激によって発症するからである。これまでの研究で以下を明らかにすることができた。 ①Rab7は酵素顆粒膜上に存在する。②Rab7はCCK刺激による膵調節性外分泌には影響を及ぼさない③Rab7は酵素顆粒の成熟に影響を及ぼす。④セルレイン膵炎ではトリプシンの異所性活性化は二峰性に生ずるが、Rab7 KOマウスでは第一のピークがなく、第二のピークが爆発的に生ずる。⑤Rab7 KOマウスでは第一のピーク時にRab7陽性の細胞浸潤が高度に生じている。 以上の結果から、Rab7は酵素顆粒膜上に存在し、CCK刺激による調節性外分泌には影響を与えないが、酵素顆粒の成熟に関与していると考えられた。未成熟な酵素顆粒に過剰な分泌刺激が加わることで異常なトリプシン活性化が腺房細胞内で生ずることが予想される。また、Rab7 KOマウスでは膵炎刺激のごく早期から膵内にRab7陽性細胞浸潤が生じており、これがトリプシン活性化とどのように関係しているのか解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Rab7がオートファジー経路だけではなく、酵素顆粒の膜上にも存在し、その成熟に関与していることを示すことが出来たのは大きな収穫である。また、実験的膵炎モデルとしてよく使われるセルレイン膵炎において、Rab7 KOマウスのみが爆発的にトリプシン異所性活性化が生ずること、第一のピークが生じないことは新奇の知見である。現在、免疫組織化学、ウエスタンブロットなどの手法を用いて、トリプシン活性化のメカニズムを検討中である。また、爆発的にトリプシンが活性化してもその後の回復はコントロールマウスと同等であり、膵炎反応におけるトリプシン多中心説を裏付ける結果となっている。また、他の膵炎モデル(L-アルギニン膵炎など)との対比も重要である。 本年度もマウスを用いて研究を進めていくが、セイフティバルブとして腺房細胞のin vitroモデルであるAR42J細胞も利用して検討を進める。岩手医科大学薬学部機能性科学分野の中西真弓先生から発現ベクターを供与して頂いた。これを用いてコントロール細胞、Rab7過剰発現細胞、Rab7恒常的活性化細胞、ドミナントネガティブ細胞を樹立できたところである。この細胞を詳細に解析し、Rab7の機能を解明する。①培養液中からFCSを除去したスターベーション下で細胞変化、②CCK刺激による外分泌に及ぼす影響、③高濃度CCK刺激による細胞動態の変化(オートファジー、細胞内トリプシン活性上昇、細胞壊死など)につき解析する。 以上の検討を通じてRab7蛋白の膵腺房細胞における機能、急性膵炎への関わり、トリプシン活性化のメカニズムを解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は ①未熟な酵素顆粒内におけるアミラーゼやトリプシノーゲンなどの膵酵素の挙動(量的、質的な変化)。 ②絶食刺激や実験的急性膵炎モデル(セルレイン膵炎、L-アルギニン膵炎)における膵酵素の動的な変化(量的、質的)。予備実験では、絶食にするとアミラーゼはオートファジーにより減少するが、その程度はRab7KOマウスでも変化がない。 ③膵腺房細胞には膵酵素の細胞内での活性化の防御機構として、オートファジー、膵分泌性トリプシンインヒビターとしてのSPINK3などの機能を持っている。Rab7マウスではこれらの防御機構に異常が生じているかどうか。 などを検討していく。 マウスでの検討がうまく進まない場合は、上述のin vitroモデルであるAR42J細胞をうまく絡めながら検討を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
ごく少量の残額となったために、購入できる物品がなかった。次年度に繰り越し、問題なく使用可能である。
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