2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of additional glycosylatoin sites in the envelope protein of Hepatitis B Virus associated with HBV reactivation and hepatocellular carcinogenesis
Project/Area Number |
19K08479
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 清顕 愛知医科大学, 医学部, 教授 (50551420)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖鎖修飾変異 / HBV再活性化 / 発癌 / エンベロープ蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫抑制や化学療法により発症するB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化は、HBVキャリアや日本人の2,500-3,000万人にものぼる既往感染者に発生し得る。HBV再活性化は重症化することが多く、その対策は極めて重要である。また、HBVによる肝臓癌はC型肝炎と比較してその発生数が低下しておらず、HBVによる肝発癌への対策は十分とは言い難い。最近、海外からHBVエンベロープ蛋白質上の”additional glycosylation”(ここでは追加糖鎖修飾とする)がHBV再活性化や発癌症例で高頻度に認められるという報告が相次いでいる。本研究において、国内のHBV再活性化や発癌症例におけるエンベロープ蛋白質の追加糖鎖修飾変異の発現頻度を明らかにした。また、この追加糖鎖修飾変異をin vitro感染モデルに導入し、それらの変異がHBVの増殖やウイルス蛋白質発現に与える影響を解析し、再活性化成立機序のウイルス側因子を解明した。今回、17例のHBV再活性化症例において次世代シーケンサーを使用して追加糖鎖修飾変異の出現頻度を解析したところ3/17例(17.6%)に同変異を認めた。一方でB型急性肝炎においては1/19例(5.3%)に同変異を認めた。このように再活性化症例と急性肝炎症例における追加糖鎖修飾変異の出現頻度に有意差は認めなかったが、さらに症例数が増加すると有意差が出現する可能性を認めた。また、我々はin vitro感染モデルにおいて免疫エスケープ変異と追加糖鎖修飾変異の両者を遺伝子挿入することによりHBs抗原低値、HBV DNA高値というHBV潜伏感染の状態が再現された。HBV潜伏感染は免疫抑制や化学療法によりHBV再活性化を引き起こすハイリスクとなると考えられ、今回の研究でHBV再活性化を惹起するウイルス側の一つの要因を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はin vitro感染モデルを使用して遺伝子操作によりウイルス変異を挿入し、HBV DNAやHBs抗原を測定し、HBV再活性化のウイルス側の発生機序を解析した。HBV constructに関しては、HBVはエンベロープ領域とポリメラーゼ領域がoverlapしているため、ポリメラーゼ領域への変異の影響を避けるために1.24倍長のHBV constructにstopコドンを挿入したエンベロープ蛋白質欠損replication constructと0.7倍長のエンベロープ蛋白質発現constuctを共感染させるcomplimentary assayを用い、変異を0.7倍長constructのみに導入することによりエンベロープ蛋白質への影響のみを観察した。0.7倍長constructに古典的な免疫エスケープ変異であるG145R変異のみを挿入したconstructとG145Rにエンベロープ蛋白質に追加糖鎖修飾を形成するM133Tを加えたM133T/G145R変異を作成し、HBs抗原、HBe抗原、HBV DNAの培養上清中への分泌量を野生型と比較した。その結果G145R変異は野生型と比較してHBs抗原が低下しており、M133T/G145R変異ではさらにHBs抗原が低下していた。また、G145R変異単独ではHBV DNA量は野生型と比較して30%程度に低下していたのと比較して、M133T/G145R変異においてはHBV DNAはG145R変異単独より上昇しており、その結果HBs抗原低値、HBV DNA高値というHBVの潜伏感染の状況が再現された。このようなHBVの潜伏感染の状態に対して免疫抑制や化学療法を施行することはHBV再活性化のハイリスクと考えられ、今回の研究によりHBV再活性化を引き起こすウイルス側の一つの要因を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は追加糖鎖修飾変異の発癌に与える影響を解析するため、キメラマウス由来のヒト正常肝細胞であるPXB細胞を用いて解析する。具体的には糖鎖追加修飾(M133T/G145R変異)を挿入したHBVをPXB細胞に感染させ、PXB細胞の小胞体ストレスや酸化ストレスに関して野生型を感染した場合と比較する。さらには、マイクロアレイを用いて野生型を感染させたときと変異型を感染させたときとで、各種遺伝子発現を比較することによりがん遺伝子やがん抑制遺伝子等発癌に関連する遺伝子の変化を観察する。これまでに行った私たちの予備実験では、HBVによる肝発癌機構としてこれまで報告されているHBs抗原の肝細胞内への異常蓄積は、本追加糖鎖修飾変異により認められなかった。このことから、過剰な小胞体ストレスは惹起されていないものと考えられ、他の発癌機構として肝臓癌の発癌に関与すると報告されている糖転移酵素のGnT-IIIおよびVの活性を測定する。エンベロープ蛋白質に過剰な糖鎖が結合することにより、血管新生や細胞増殖につながり発癌を惹起する糖転移酵素 の活性が上昇している可能性がある。
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Causes of Carryover |
in vitro感染モデルにおいて一部研究試薬の使用量が予定より少なかったため6,490円を次年度に持ち越しin vitro感染モデルを使用した特に発癌関連の解析に関する研究試薬として使用する予定である。
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