2020 Fiscal Year Research-status Report
多面的な作用をもつHDLと細胞とのインタラクションの解明
Project/Area Number |
19K08490
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
入野 康宏 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (10415565)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杜 隆嗣 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (50379418)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高比重リポタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化に伴って増加する心血管疾患に対する治療戦略として、血清脂質の量的管理のみならず質的管理(Lipoquality)の重要性が認識されるようになった。 とくに、HDL (high-density lipoproteins:高密度リポタンパク質)の抗動脈硬化機能が心血管疾患の新たな治療標的として注目を集めている。HDLの重要性は、 量(HDL-C値)から質(HDL機能)であると認識されつつあり、近年盛んにHDL機能の多様性が報告されているが、その制御機構は十分に解明されているとは言い 難い。そこで、HDLが多面的な作用を有している理由を解明することを目的とした。HDLが細胞に作用するためにはHDLが細胞内に取り込まれる必要があると考えたので、本年度はHDLが細胞内に取り込まれる分子機序を調べた。 HDL産出の分子機序を調べるために、取り込まれたHDLを定量可能な実験系を構築した。蛍光ラベルしたHDLを細胞に取り込ませたのちに、界面活性剤を用いて細胞を溶解させた。溶解液中に含まれる蛍光物質の蛍光強度を測定することで取り込まれたHDLを定量した。昨年度HDLと相互作用するタンパク質をノックダウンさせて、細胞内に存在するタンパク質発現量を減少させると、産出されるHDL量が変化することもわかったので、HDLの取り込みとそのタンパク質の関連性を調べたが、はっきりとした関連性は認められなかった。 他のリポタンパク質とは異なりHDLには含有タンパク質が多い。細胞の受容体を介してHDLが多面的な作用を発揮しているのではと考えて、HeLa細胞にHDLを添加したところ、FAKのリン酸化が確認できた。このHDLにはフィブロネクチンが含まれており、このHDLを添加したHeLa細胞は、細胞増殖が活性化され、同時に接着能も亢進させていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HDL取り込み機構を調べるためのモデル培養細胞系を構築することができたが、この取り込み能を制御する分子機構の解明には至らなかった。しかし、HDLに含有される分子によってはがんの発生・進展に対しむしろ悪影響を及ぼす可能性を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
HDLの取り込み能を評価できる実験系を構築できたが、HDL取り込みに関与する分子群が明らかとなっていない。今後は、各種薬剤を添加したときにHDLの取り込み能がどのように変化するかを調べる。
|
Causes of Carryover |
当初の予定より研究資材を少なく抑えることができたため、未使用費が発生した。引き続き次年度以降も研究資材費にあてる。
|