2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis for a role of vascular senescence in age-related disease
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19K08502
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
池田 宏二 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (90423871)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 老化 / 代謝異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
「人は血管とともに老いる」と言われるように、血管の老化は個体の老化において重要な役割を果たすと考えられてきたが、血管老化が老化関連疾患の発症・進展に原因的な役割を果たすかどうかは明らかとされていない。私達はTie2プロモーターを用いてテロメア結合タンパクであるTRF2のドミナントネガティブ体 (TRF2DN)を血管内皮細胞に過剰発現させることで、血管内皮細胞特異的に細胞老化を誘導したマウスの作出に成功した。しかしTie2プロモーターは多くの血球系細胞でも活性を有するため、より血管内皮細胞に特異性が高いVE-cadherinプロモーターを使用して血管内皮細胞特異的老化マウスを作出した。今年度はVEcad-TRF2DN-Tgマウスの代謝表現型の解析を実施した。VEcad-TRF2DN-Tgマウスは野生型マウスと比較して、体重および体脂肪率に有意な変化を示さないにも関わらず、20週齢の時点で全身のインスリン感受性が低下していることがわかった。 加えて、老化血管内皮細胞が全身の代謝障害を引き起こすメカニズムとして私達が考えているSASPに関して、より詳細な解析を行った。線維芽細胞では、SASPを引き起こす様々な老化関連分泌因子の発現誘導にIL-1aが重要な働きをしているとの報告があり、私達は老化血管内皮細胞でもIL-1aの発現が著明に上昇していることを確認した。血管内皮細胞SASPにおけるIL-1aの役割を検討するため、IL-1R antagonistを用いてIL-1のシグナルを阻害した。その結果、IL-1シグナルを阻害すると老化血管内皮細胞におけるSASP因子群の発現が総じて減少したことから、血管内皮細胞においてもIL-1がSASP因子群発現調節に重要な役割を果たすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は申請時の計画通り進んでおり、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降も私たちが作出した血管内皮特異的老化マウス(VEcad-TRF2DN-Tgマウス)の代謝表現型の解析を進めると同時に、IL-1a阻害による血管内皮SASPの抑制に関するin vivoの研究も進める予定である。具体的にはVEcad-TRF2DN-Tgおよび野生型マウスにIL-1a中和抗体を投与する。中和抗体の投与は浸透圧ポンプを用いて行い、10週齢から開始して8-10週間投与を続ける。その後、マウスのインスリン感受性をインスリン負荷テストで検討した後に、マウスから脂肪組織を摘出し、脂肪細胞の早期老化や酸化ストレス障害を検討する。IL-1a阻害により血管内皮SASPが抑制できれば、血管内皮特異的老化マウスで認めたインスリン感受性低下がIL-1a中和抗体投与によりキャンセルできる可能性が高いと考えている。 加えて、SASPを引き起こす老化関連分泌因子群の概要を明らかとするための実験も行う予定である。若い血管内皮細胞および老化血管内皮細胞から分泌された因子群を含む培養上清を準備し、この上清中に含まれるタンパク質を質量分析解析によって解析・同定する(ショットガンセクレトーム解析)。ショットガンセクレトーム解析で得られたデータを解析することで、老化血管内皮細胞が分泌し、脂肪脂肪の機能障害を引き起こす因子(群)の解明を目指す。若い血管内皮細胞と老化血管内皮細胞で分泌量が変化している分泌タンパクだけを抽出してリスト化し、パスウェイ解析を行って老化血管内皮細胞由来の分泌因子群により活性化されるパスウェイを明らかとする。有望なパスウェイが幾つか見つかれば、脂肪細胞を用いて、それらパスウェイを人為的に活性化する処置を行い、脂肪細胞の機能障害が誘導されるかどうかの検証を進めていく。
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