2021 Fiscal Year Research-status Report
心臓突然死に関連する遺伝子異常・多型の解明と人工知能(AI)の応用
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19K08505
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
相庭 武司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (40574348)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 篤 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50392014)
西村 邦宏 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (70397834)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不整脈 / 心臓突然死 / 心室頻拍 |
Outline of Annual Research Achievements |
若年者の心臓突然死の原因の一つにカテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)があるが、通常の安静時心電図のみではCPVTを診断することは極めて困難である。CPVT発端者に病的なRYR2遺伝子変異が同定された場合は、その家族に対しても遺伝子検査(カスケードスクリーニング)が推奨される。しかしながら、CPVT患者における家系内遺伝子スクリーニングの臨床的意義は明らかではない。そこでCPVTの臨床診断基準を満たし、かつRYR2の病的変異を認めた日本人CPVT発端者82例(年齢中央値:10歳、男性45例)を対象とし、両親共にRYR2変異を認めなかった患者(孤発性:58例)と両親のいずれかに発端者と同じRYR2変異を認めた患者(家族性:24例)、さらに家族性CPVT1患者の家族(同胞)の臨床的特徴を統計学的に検討した。 RYR2遺伝子変異は孤発性では家族性よりもC末端に多く逆にN末端に少なかった。孤発性では家族性より発症年齢が若く5~10歳時点での初回の心イベント(失神および心停止)の累積発生率は、孤発性が家族性より有意に高かった。一方、致死性イベントの既往に両群間で差はなかった。 家族性の遺伝子変異は71%が母由来であり、遺伝子型陽性の両親の38%が失神/心停止の既往を有していた。家族性のRYR2遺伝子変異が父由来か母由来かで発端者の臨床背景に違いはなく、両親の心イベント既往は必ずしも患者の心停止イベントとは関連しない。一方、遺伝子型陽性の同胞(兄弟姉妹)は、発端者の診断時で67%に失神もしくは心停止の既往を有していた。以上から、両親、同胞への遺伝子検査は患者本人のみならず、家族の心臓突然死を防ぐ早期診断、リスク層別化、予防的治療介入を可能にする。 RYR2など心臓突然死に関する遺伝子変異を迅速かつ正確に、さらに低コストで提供できるようにするAIを用いた解析を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度も引き続きCOVID-19の蔓延に伴いCOVID-19の抗原検査、PCR検査などの業務が増加し、また非常事態宣言下での共同研究者との打ち合わせ、患者サンプルの収集にも多大な制約があり十分なサンプルが集まっていない。またゲノムデータをAI(人工知能)に解析するための作業についてもコロナ禍で分担研究者との作業に支障を来したため遅延している。 同時に全エクソンあるいは全ゲノム解析データについてはデータを集約しており、各データを統合し解析を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
全ゲノム解析データ、全エクソン解析結果、さらにパネル解析結果などを用いて心臓突然死に関連するバリアント・遺伝多型をAIから予測、同定する。さらにそれらの重みづけを行いPolygenic risk scoreを計算することを目標とする。 ただしコロナ禍での現状では統計的解析を行う上で十分な数のサンプルが得られず、またAIを用いた研究手法に時間的制約が生じていることから、心臓突然死に関する新たな遺伝学的スコアの算出は断念し、既知のQT延長症候群、カテコラミン誘発多形性心室頻拍、Brugada症候群などの遺伝性不整脈関連遺伝子に絞ったバリアントをもとに、不整脈パネルの臨床的意義を目的とした研究に変更することも検討中である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルス感染症の影響により共同実験が困難となったため 使用計画:突然死に関するゲノム解析、特に不整脈心筋症パネルによる解析に使用する
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Research Products
(8 results)