2019 Fiscal Year Research-status Report

肺高血圧血管病変におけるユビキチン様修飾による平滑筋分化誘導機構の解明

Research Project

Project/Area Number	19K08508
Research Institution	Gunma University
Principal Investigator	小和瀬桂子群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50594264)
Project Period (FY)	2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords	血管平滑筋 / 肺高血圧
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、肺動脈高血圧症の発症と進展における血管平滑筋細胞分化誘導の調節異常の観点から、ユビキチン様修飾（SUMO）化E3リガーゼ活性を持つPIAS1やSUMO化の機構を解明する事を目的とした。肺動脈平滑筋細胞(PASMC)を用いたreal-time PCR法にて、siRNAによりPIAS１発現を抑制する事により、TGFbetaによる平滑筋分化マーカー誘導が抑制された。一方、SUMO化E2リガーゼであるubc9を抑制した系ではTGFbetaによる平滑筋分化マーカーの誘導は抑制されなかった。また、Notchシグナルの細胞内ドメインであるN1-ICDをアデノウイルスベクターにより発現させると平滑筋分化マーカーが誘導され、この誘導はPIAS1やubc9のsiRNAで抑制された。一方PIAS1やubc9ははPDGF,FGF2,IL1beta刺激による平滑筋分化マーカー抑制作用には関与しなかった。これらよりTGFbetaやNotchシグナルが平滑筋分化マーカーを誘導する機序に、PIAS1やSUMO化が関与している可能性がある。また肺高血圧での肺動脈リモデリングを促進させることなどが報告されているosetoprotegerin(OPG)に注目し、ヒトOPGプロモーターを用いてルシフェラーゼアッセイを行った、その結果、OPGはNotchシグナルやPIAS family、SRFにより著名に活性化した。また、PASMCにおいてsiRNAを用いてPIAS1の発現を抑制すると、OPG発現も抑制されることを示した。以上の結果より、PASMCにおけるOPG発現にはPIAS1やNotchシグナル、SRFが関与している可能性がある。さらに肺高血圧モデルマウスにおいて、TGFbetaRII, Notch1の発言は肺動脈中膜に多く発現し、OPGやSUMO1の発現は気道上皮細胞に強く認められた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason アデノウイルスベクターを作製する際に、２９３細胞の発育が不良であったため、時間を要した。また、市販のPIAS1抗体は非特異的に反応するため、適切なPIAS1抗体が必要であるが、作製に至っていない。
Strategy for Future Research Activity	私達は、低酸素に加えVEGF-R抗体を用い、よりヒト肺高血圧の病態に近いマウスモデルを作製した。このモデルマウスを用い、平滑筋分化マーカー発現とOPG,ubc9,SUMO1の発現を検討する。具体的には現在までにPIAS1,　ubc9、SUMO1等の発現部位が同定できたため、PIAS1やubc9のアデノウイルスベクターを用いて、前述した肺高血圧の病態モデルマウスに投与し、右室重量や右心圧を測定する。同時に平滑筋分化や炎症性サイトカイン、OPFの発現を検討する予定でである。また、上記モデルマウスの血清を用い、TGFbeta、OPG、IL1alpha/beta、FGF2等の肺高血圧発症・進展に関与すると考えられる因子の発現変化について、EILSAを用いて検討する。さらに、私達は現在までに、血管平滑筋においてFGF23が血管石灰化を抑止することを示した。現在までに肺血管平滑筋の増殖と石灰化の機序が示されているため、その観点からFGF23をアデノウイルスを用いて強制発現させることによるOPG, Msx2,　BMP4などの発現にPIAS1やSUMO化が関与しているかどうか、PASMCや前述の肺高血圧モデルマウスとアデノウイルスベクターを用いて検討する。
Causes of Carryover	アデノウイルスベクター作製や抗体作製の遅れが出たため、本年度使用分からジエンド使用額が生じた。次年度に肺高血圧モデルマウスを用いた研究を行う予定である。具体的にはアデノウイルスベクターを用い、肺高血圧モデルマウスの右室重量や右心圧を測定する。同時に平滑筋分化や炎症性サイトカイン、OPGの発現を検討する予定である。