2020 Fiscal Year Research-status Report
肺高血圧血管病変におけるユビキチン様修飾による平滑筋分化誘導機構の解明
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19K08508
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小和瀬 桂子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50594264)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管平滑筋 / 肺高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、肺動脈高血圧症の発症と進展における血管平滑筋細胞分化誘導の調節異常の観点から、ユビキチン様修飾(SUMO)化E3リガーゼ活性をもつprotein inhibitor of activated STAT 1(PIAS1)の機能解明、SUMO化が平滑筋にもたらす影響について解明することを目的とした。私達は、血管平滑筋細胞においてclass I bHLH蛋白に結合する因子としてPIAS1を同定し、PIAS1がSRF-CArGシスエレメントを介した平滑筋分化マーカーの発現に重要な役割を担っていることを解明した。さらに、破骨細胞分化を調節する因子として同定されたosteoprotegerine(OPG)が、血管平滑筋細胞において、FGF23がOPG発現を誘導することにより、血管石灰化を抑制することを示した。また、OPGプロモーターがPIAS familyやSRFで活性化される事を示し、さらに、ヒト肺動脈平滑筋細胞において、siRNAを用いてPIAS1発現をknock downすることにより、OPG発現が抑制されることを示した。そのため、私達は、SUMO化E3リガーゼとしてのPIAS1の活性や発現レベルの変化が平滑筋形質変換やosteoprotegerine(OPG)、炎症性サイトカインの発現を調節し、肺高血圧症の発症を制御するという仮説を立てている。 肺動脈平滑筋細胞(PASMC)を用いたreal-time PCR法にて、siRNAによるPIAS1発現を抑制することにより、TGFbetaの平滑筋分化を誘導するシグナルが抑制された。一方で、ubc9を抑制した系では、この働きが認められなかった。一方、IL1beta刺激による平滑筋分化抑制には関与しなかった。また、OPGはNotchシグナルやPIASfamilyにより有意に誘導され、PIAS1siRNAによりこの誘導が抑制されることよりPIAS1はOPG発現にも関与していることが示された。さらに、肺高血圧モデルマウスでOPGやSUMOの気道上皮細胞分布も認められ、病態への関与が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
アデノウイルスベクターの作成が、細胞毒性となり育たなかったため、時間を要した。また、Covid19感染拡大により、学内入構が制限されたり、感染対応のため研究時間がとれないことも多かった。そのため、in vivoの実験が難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
私達は、低酸素に加えVEGF-R抗体を用い、よりヒト肺高血圧の病態に近いマウスモデルを作製した。このモデルマウスを用い、平滑筋分化マーカー発現とOPG,ubc9,SUMO1の発現を検討する。具体的には現在までにPIAS1, ubc9、SUMO1等の発現部位が同定できたため、PIAS1やubc9のアデノウイルスベクターを用いて、前述した肺高血圧の病態モデルマウスに投与し、右室重量や右心圧を測定する。同時に平滑筋分化や炎症性サイトカイン、OPFの発現を検討する予定でである。また、上記モデルマウスの血清を用い、TGFbeta、OPG、IL1alpha/beta、FGF2等の肺高血圧発症・進展に関与すると考えられる因子の発現変化について、EILSAを用いて検討する。 さらに、私達は現在までに、血管平滑筋においてFGF23が血管石灰化を抑止することを示した。現在までに肺血管平滑筋の増殖と石灰化の機序が示されているため、その観点からFGF23をアデノウイルスを用いて強制発現させることによるOPG, Msx2, BMP4などの発現にPIAS1やSUMO化が関与しているかどうか、PASMCや前述の肺高血圧モデルマウスとアデノウイルスベクターを用いて検討する。
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Causes of Carryover |
今年度はCovid19の感染拡大のため、実験が滞りがちとなった。また、病院での感染制御業務が多忙となり、実験時間に制約が生じた。特にin vivoの実験は継続性が必要なため、施行することが出来なかった。使用計画としては、低酸素モデルマウスを使用し、アデノウイルスベクターを用いた実験を行う予定である。
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