2019 Fiscal Year Research-status Report
肺動脈性肺高血圧症での新規アポトーシス誘導物質の病態への関連性と新規治療法の開発
Project/Area Number |
19K08519
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
江口 正倫 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70585405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
世古 義規 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (30240708)
前村 浩二 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90282649)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺動脈性肺高血圧症 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は予後不良の病態であるが、近年、薬物療法の進歩により予後は改善してきている。しかし、その効果は十分とはいえず、新しい機序の治療薬の開発が喫緊の課題である。Oxidative stress-Responsive Apoptosis Inducing Protein(ORAIP)は低酸素負荷後再酸素化刺激された心筋細胞から分泌されアポトーシスを誘導する分泌型タンパク質として、2015年にはじめて同定された物質である。ORAIPは酸化ストレス性疾患のバイオマーカーとしてだけでなく、その中和抗体は新しい機序の治療薬として注目されている。本研究では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の症例から採取、保管した血液中のORAIP濃度を測定し、PAHのバイオマーカーとしての有用性を探究する。また、ORAIPのPAHの病態への関与を解明する。これらの研究は、既存の治療薬とは異なるアポトーシスを制御することで新しい治療法の開発を目指す、その基盤となる研究である。2019年はモノクロタリン(MCT)-PAHモデルラットを作成し、PAHモデルラットの肺組織で、ORAIP濃度が上昇している事を確認した。また、anti-ORAIP中和抗体を用いてPAHの改善効果を検討した。anti-ARAIP中和抗体投与により、MCT-PAHモデルラットの右心室圧はIgG抗体投与群と比較して、有意に低下しており、右室/左心室重量比の低下が認められた。組織上も肺動動脈の壁肥厚の改善が認められた。そこで抗体医薬として肺動脈性肺高血圧症に対する用途特許を目指す。既存薬とは作用機序が全く異なり、相互に補完する可能性があるため、単独療法または両者の併用療法は肺動脈の障害を抑制し、血管拡張を促進し、予後を飛躍的に改善する治療法となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MCT-PAHモデルでのORAIPの治療効果を示すことが出来た。当初の予定通りである。 臨床検体のサンプルの血中濃度の測定は現在進行中であり、結果は示せていない。 協同研究者による、ORAIP受容体の同定は進行しており、今後ORAIP受容体のノックアウトラットを用いたPAHの病態解明が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、より臨床のPAHに近い低酸素PAHモデルラットを作成し、anti-ORAIP中和抗体の治療効果を検討する。 ORAIP受容体の同定がすすみ、ORAIP-KO ratを用いて、PAHモデルをwild typeと比較してPAHの程度を評価する。 PAH症例のサンプルを用い、ORAIPの血中濃度を測定し、PAHのバイオマーカとしての可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
計画どおり使用したが、端数が生じてしまった。 次年度交付分と合わせて、物品費等に充てることとしたい。
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