2020 Fiscal Year Research-status Report
コピー数多型解析によるトラスツズマブ誘発心毒性の発症予測
Project/Area Number |
19K08541
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大谷 規彰 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60380408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 真 九州大学, 大学病院, 講師 (60403961)
山下 奈真 九州大学, 大学病院, 助教 (60608967) [Withdrawn]
秋吉 清百合 九州大学, 大学病院, 助教 (50567360)
筒井 裕之 九州大学, 医学研究院, 教授 (70264017)
井手 友美 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90380625)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トラスツズマブ / 心毒性 / コピー数多型 / ゲノム遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2006年から2015年までに当院でトラスツズマブ治療を受けた乳がん患者160人(56 ± 12歳)のデータベースを作成し、後方視的に解析し、27人(16.9%)がトラスツズマブ誘発心毒性を発症していることが判明した。多変量解析では、心エコーによるトラスツズマブ投与前の左室駆出率低値のみが、トラスツズマブ誘発心毒性発症の独立した予測因子であり、欧米からの報告と全く異なっていた。このことは心機能正常症例に対しトラスツズマブ投与前に臨床情報のみで心毒性を予測することは困難であり、心毒性発症には遺伝的要因が強く関与していることが示唆された。(Ohtani et al., Clin Res Cardiol. 2019) そこで本研究では、心毒性発症にゲノム遺伝子の個人差が関与しているという仮説のもと、トラスツズマブ誘発心毒性発症群と未発症対照群でゲノム遺伝子の個人差を解明し、コピー数多型がトラスツズマブ誘発心毒性発症に寄与しているかどうかを明らかにすることを目的とする。疾患関連遺伝子、薬剤感受性遺伝子でコピー数多型を示す遺伝子を同定できれば、患者ひとり一人に効果的で安全的な最適治療を提供するゲノム医療が実現することが期待できると考えられる。そのため当院ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会承認後に、前記データベースに2020年までの症例を加え、データベースを再作成した。2019年度までに計20症例に同意をいただき、匿名化の後生殖細胞系列ゲノムDNAを抽出していたが、本年はさらに20症例の生殖細胞系列ゲノムDNAを抽出した。DNAサンプルの品質確認を厳格に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の中で症例の募集、同意の取得が進まなかった。生殖細胞系列のゲノム情報を扱うため、対象患者に対する説明、同意に対面で時間を割かなければならないが、うまくいかないことが多かった。また、未発症群はトラスツズマブ投与後に最低6回以上心エコーが行われ、心機能が低下していない群という厳格な条件をつけていたため、検査回数が足りないために未発症群に組み入れることができない症例も多かった。
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Strategy for Future Research Activity |
心毒性を発症した20症例と未発症の20症例の生殖細胞系列ゲノムDNAを抽出し、品質を確認したため、次世代シークエンサーで全エクソームシーケンス解析を行う。心毒性発症群で未発症群と比較し、コピー数多型が有意に高頻度で認められた場合、同領域の高密度カスタムオリゴヌクレオチドアレイを作成し、検出されたコピー数多型について個別に確認実験を行う。得られたコピー数多型情報については、対照症例や日本人のレファレンスゲノム配列と比較し、頻度や分布、遺伝形式について詳細な解析を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度に収集されたエクソームシーケンス解析用DNAサンプルをまとめて解析すると安価になるため、繰越しを行う。
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