2020 Fiscal Year Research-status Report
循環器疾患の臓器障害におけるビッグアンジオテンシン-25の役割と生成機構の解明
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19K08543
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
永田 さやか 宮崎大学, 医学部, 助教 (00452920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 和雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (50204912)
菊池 正雄 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20608476)
和田 啓 宮崎大学, 医学部, 准教授 (80379304)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビッグアンジオテンシン-25 / レニン・アンジオテンシン系 / 糖尿病性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
レニン・アンジオテンシン系(RA系)は、循環器疾患や腎臓疾患に重要な役割を果たしている事が知られており、ゆえにRA系阻害薬は広く臨床の現場で使用されている。しかしながら、臓器障害においては現存するRA系阻害薬では効果が不十分であるという報告があり、また組織中のアンジオテンシンII(Ang II)生成機構についても不明な点が多い。これまで研究代表者らは、プロアンジオテンシン-12(proang-12)とビッグアンジオテンシン-25(Bang-25)といった新しいアンジオテンシン関連ペプチドを同定しており、それらのペプチドが組織中のAng II 生成機構に関連している可能性が高い事を示してきた。そこでBang-25について(1)生体内の分布(2)効果の確認(3)生成機構の解明と生成酵素の探索、を行う事で組織Ang II 生成機構を解明し、将来的な循環器・腎臓疾患の臓器障害における診断薬や治療薬開発へと臨床応用を目指す事を目的として行った。 独自に開発したBang-25の測定系であるAmplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay(Alpha)LISA法を利用し、2型糖尿病患者の尿中Bang-25を測定した。その結果、尿中アルブミンの量にかかわらず糖尿病患者では尿中Bang-25が増加していることが明らかとなった。近年、典型的な2型糖尿病の患者でアルブミン尿を伴わずに腎機能が低下する糖尿病性腎臓病(DKD)という概念が提唱されてきた。これらより尿中Bang-25は尿中アルブミンとは相関せず、推定糸球体濾過量と相関することからDKDの新しいバイオマーカーになりうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確立したBang-25のAlpha LISA法を用いて腎臓疾患、糖尿病、ICUの患者、腎生検の腎臓組織や心疾患、オペ前後の尿・血液を含めた尿検体のBang-25の測定を継続中である。その結果、Bang-25の尿中濃度は血中に比べて高い事がわかった。また、腎障害や糖尿病で尿中Bang-25が上昇する事が明らかとなった。また尿中Bang-25はDKDの新しいマーカーになりうる可能性があると考えられた。これらの成果は論文として「Nephrology」に発表した。 次に疾患モデル動物にBang-25を投与したところ血圧の変化は見られなかった。これは、ヒトとの種の違いにより、Bang-25の変換酵素が異なる可能性が考えられた。また、培養細胞にレニン阻害剤などを反応させて現在、RA系関連遺伝子の発現の変化を検討中である。以上より研究目的(1)はおおむね達成できたといえるが、様々な疾患患者のBang-25の測定を引き続き行っている。また、Bang-25の局在を明らかにするために腎生検の検体を集めているところである。 さらに研究目的(2)については、ヒト以外の種での検討は難しい可能性があるため、ヒト培養細胞などを利用した方が良いと考えられた。また、研究目的(3)について胎盤や腎臓の培養細胞にレニン阻害剤などを加えて細胞内のRA系因子の遺伝子発現や生成されるペプチドの検討を行っている。特に研究目的(1)の成果より、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的(1)については、DKDと尿中Bang-25の関連が示唆されたため、バイオマーカーとして利用可能かどうかを他の因子との関連性を含めて明確にする。また、腎生検の検体を用いてBang-25の局在と疾患重症度を比較したりRA系因子との局在の違いを明確にする。さらにAlpha LISA法は、測定機器が特殊であるため、どの施設でもBang-25の測定ができるように測定感度とサンプル処理法を検討して、簡便で高感度な測定系に改良する。また、引き続き他の疾患についても尿中Bang-25との関連を明確にしていく。研究目的(2)については、Bang-25の投与がモデル動物の血圧に影響を及ぼさなかった事から、ヒトとの種の違いにより、Bang-25の変換酵素が異なる可能性が考えられた。そのため実験動物だけでなくヒト培養細胞での検討も考えたい。しかしながらBang-25の組織への移行性等についてはラットやマウスを用いて比較検討する。研究目的(3)については、研究目的(1)でBang-25とDKDの関連が示唆されたことから、特に腎臓や膵臓の培養細胞を用いて糖尿病治療薬やRA系阻害薬などの及ぼす効果を検討する。加えてBang-25の生成・変換酵素に特異的なプロテアーゼ阻害剤を検索する。またBang-25の生成および変換阻害活性を示す化合物を同定した後に、Bang-25の生成能の高い組織や細胞が明らかとなった場合には、Bang-25生成および変換酵素の精製を試みる。
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Causes of Carryover |
2020年度は、COVID-19の拡大により、学会や研究打ち合わせといった予定していた旅費を使用しなかった。さらに2021年度から所属、研究室が変わるために2020年度後半は研究室の引っ越しや移動先での研究室の立ち上げなどのために実験を中断せざる得ない状況にあった。そのため、翌年度への繰り越し額が生じた。
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Research Products
(8 results)