2020 Fiscal Year Research-status Report
The mechanism of the transformation of smooth muscle cells in familial thoracic aortic aneurysm and dissection (FTAAD) of point mutation of myosin heavy chain, Myh11,
Project/Area Number |
19K08548
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
早川 朋子 自治医科大学, 医学部, 助教 (30420821)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 良三 自治医科大学, 医学部, 学長 (60207975)
今井 靖 自治医科大学, 医学部, 教授 (20359631)
相澤 健一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70436484)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 循環器 / 血管平滑筋細胞 / Nsd1 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管平滑筋細胞の収縮型(分化型)から合成型(脱分化型)への形質転換は動脈硬化疾患の重要な原因である。平滑筋ミオシン重鎖(Myh11)は平滑筋細胞の分化マーカーであり、主に細胞質に局在して平滑筋収縮に寄与する。それに対し核内に局在するミオシンは転写制御に関与するとの報告がある。申請者らは、1)マウスiPS細胞を用いた平滑筋分化誘導培養系構築と、2)合成型から収縮型平滑筋細胞へ移行する培養系構築に成功し、形質転換を制御するヒストン修飾酵素Nsd1を同定した。Nsd1の発現を抑制すると培養平滑筋細胞のMyh11発現と収縮性が亢進する。さらに、申請者らは家族性大動脈解離家系からMyh11遺伝子変異を見出し、遺伝子変異マウスの樹立に成功した。このマウスはストレス負荷により大動脈解離を高頻度で生じるなど血管病の表現型を呈する。 Nsd1発現抑制とMyh11発現亢進の間で作用する分子の解析を行った結果、bHLH型転写因子群がNsd1の下流として働きMyh11発現亢進を誘導することが判明した。 我々は平滑筋形質転換メカニズムをin vitroのみならずin vivoで解析するために、ホモ接合型のNsd1遺伝子欠損マウスを作出し、野生型、ヘテロ型、ホモ型マウスの表現型の比較を行った。Nsd1変異が原因としてしられるソトス症候群は一部の患者で低血圧の病態がある。そこでin vivoにおけるNsd1の血管平滑筋における働きを調べるために、ホモ接合型のNsd1欠損マウスをもちいて浸透圧ポンプを利用したアンジオテンシンII連続投与モデルを作製し、血圧変化と大動脈への影響を観察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養平滑筋細胞に対しNsd1発現抑制を行ったところ、培養平滑筋細胞の性質が合成型から収縮型へ部分的に回復したことが確認された。さらにRNA seqによるGene ontology analysisにより、発現上昇遺伝子群は有意差の大きい順の上位5位全てがcirculatory, cardiovascular, muscle system関連遺伝子群であり、またmuscle contractionも含まれていたことから、収縮型平滑筋に重要な遺伝子群が網羅的に上昇した事が証明された。この時、発現が低下した遺伝子の解析を行ったところ、Tw1を含む複数のbHLH型転写因子群の発現が約20~60%低下することが判明した。 bHLH転写因子群に着目し、培養平滑筋細胞に対して発現抑制を行ったところ、Nsd1抑制と同様にMyh11発現亢進が確認された。これにより、Nsd1の下流としてMyh11発現を調節する遺伝子として、bHLH転写因子群が重要である事がわかった。 Nsd1遺伝子欠損マウスを大量に作出するために体外受精技術の新規確立を行った。ヘテロの卵と精子より体外受精を行ったところ、野生型、ヘテロ、ホモの割合は、32%, 47%, 21%であった。ヘテロの雄雌の交配ではホモ接合体はほとんど生まれてこなかったが、体外受精技術が確立したため、ホモ接合体の解析が可能になった。 我々はNsd1遺伝子欠損マウスの作製を行い、野生型、ヘテロ型、ホモ型マウスの表現型の比較を行った。Nsd1遺伝子のハプロ不全が原因として知られるソトス症候群は、新生児の5-40%の頻度で先天性心奇形が、また小児から成人において上行大動脈拡張が認められる。そこで我々は心血管系におけるNsd1の作用を調べるため、Nsd1欠損ホモ接合マウスを作製し心機能の解析を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
Myh11発現調節機構を解明するために、Nsd1の下流因子の解析を網羅的に行う。培養平滑筋細胞に対してNsd1抑制を行いRNA seq解析を行った。Gene ontology analysisの結果、発現上昇遺伝子群は優位に循環器や平滑筋に関係する遺伝子が含まれていたが、発現低下遺伝子群では特に平滑筋形質転換に関係する遺伝の変動は観察されなかった。しかし、平滑筋マーカー遺伝子発現に関与するとの報告があるTw1遺伝子とそのファミリー遺伝子群の発現変動がみられることが判明した。よって、今後は発現低下遺伝子群の詳細なRNA seq解析を進める事でMyh11遺伝子発現調節を介した新たな平滑筋形質転換機構の解明を目指す。 Nsd1遺伝子のハプロ不全が原因として知られるソトス症候群は、新生児の5-40%の頻度で先天性心奇形が、また小児から成人において上行大動脈拡張が認められる。そこで我々は心血管系におけるNsd1の作用を調べるため、Nsd1欠損ホモ接合マウスを作製し心機能の解析を行った。具体的には浸透圧ポンプを利用したアンジオテンシンII連続投与モデルを作製し、血圧変化を計測した。
|
Causes of Carryover |
Nsd1はChIP seqを行うための有効な抗体が不明である。そのため複数のNsd1抗体を購入して有効なNsd1抗体の探索をする必要がある。昨年度にそれを行う予定であったが、メーカー側の事情により抗体を購入することができなかったため、今年度はNsd1抗体を大量に購入する。Nsd1がゲノム上に結合する場所を特定するためにChIP seqを行う。しかし平滑筋細胞内に存在するNsd1は低いと推測しているため、内因性のNsd1をChIP seqで検出する系を確立できない可能性は高い。その場合はタグを付加したNsd1を平滑筋細胞で過剰発現させ、タグに対する抗体を用いることで代替実験とする予定である。またNsd1の下流でYy1が作用しているとの予備データがあるため、Yy1抗体を用いてNsd1と同様にChIP seqを行う。
|