2019 Fiscal Year Research-status Report
心血管疾患関連遺伝子CSRPのヒト遺伝子変異による分子機能異常の解明
Project/Area Number |
19K08556
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 康弘 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (20565585)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム医学 / 遺伝子変異 / 分子生物学 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
CSRPのヒト一塩基変異体の分子機能異常についてin vitroで検討を行った。前研究で同定した分子機能異常をもつCSRP1ヒト一アミノ酸変異体の細胞機能への影響を検討し、変異体の過剰発現ではコントロールに比べH9C2細胞の細胞数が減少し、細胞機能へも影響しうる変異であることが示された。Tagのない変異体においても同様の結果が得られた。このことから同変異体は細胞機能に影響しうる分子機能異常をもつことが示唆され、生体の病態生理においても何らかの機能異常を示す可能性が考えられる。他のヒト一塩基変異に関しても、比較的頻度の高いコード領域のrare variantについて検討し、in vitroで分子機能異常を示すものをさらに複数同定した。これらの変異についてin silicoでの分子機能のpredictionを複数のアルゴリズムを用いて行ったところ、多く場合disruptiveな判定であったが、アルゴリズム間で予測結果が異なるものやin vitroの結果と解離するものも見られた。これらのin vitroおよびin silicoで分子機能異常を示す変異が実際生体での病態生理にどのような影響を及ぼすかについて明らかにするには、in vivoでの一塩基変異をもつマウスでの検討が必要と考えられる。一塩基変異を持つ細胞ラインの作製についてはH9C2細胞を用いてCRISPR/Cas9での作製を複数回試みたが、ターゲティングベクターの挿入は確認されるものの、一塩基変異が挿入された細胞ラインの確立は現在のところ得ることができず、今後ES細胞等の他の細胞種での作製を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検討中のCSRP1のヒト一アミノ酸変異体について、分子機能における異常だけでなく、細胞機能へも影響することが過剰発現系で確認された。このことは、生体各組織での制御プログラムやCSRP発現量の違いによって発現組織による影響の違いはあるとは考えられるが、変異の来す分子的な異常動態が生体の病態生理に影響している可能性を示唆する。ES細胞やマウスにおいて一塩基変異ラインを作製し、さらに検討を進める必要性が示唆された。 ヒト遺伝子変異の病的意義を検討するためには、in vitro系やマウスにおいて、ヒトと同様の内在性遺伝子の一塩基変異をもつラインでの解析は重要と考えられる。ゲノム編集により培養細胞ラインで作製を複数回試みたが、通常の遺伝子挿入より難易度が高いようであり、ラインを得ることはできなかった。一塩基変異細胞ラインを用いた解析は現状できておらず、やや遅れているとした。今後、ES細胞など別の細胞種を用いることで再度試行する。
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Strategy for Future Research Activity |
一塩基変異の作製については、ES細胞培養が専用の培養試薬や支持細胞を必要とすることもあり、当初培養細胞ラインからの段階的な施行を計画していたが、今後ES細胞ラインでの試行を開始する。ES細胞を用いることの利点として、任意の細胞種を分化誘導して解析することができる点がある。ヒトの一塩基変異では、体内のすべての細胞種のCSRPに変異が存在するため、ラインが確立できれば任意の細胞種を分化誘導して検討することが可能となる。 また、各変異体の分子病態について、転写調節、タンパク相互作用含めさらにin vitroでの検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
培養細胞ラインでの一塩基変異の作製に難航し、同細胞ラインを用いた解析やES細胞培養など含め保留されているものがあり、予定使用額から差額が生じた。 次年度、上記の進行に合わせ順次本年度の予定分を使用していく。
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