2020 Fiscal Year Research-status Report
低体温不整脈の発症予知と緊急治療法の構築(冠動脈灌流拍動心筋モデルでの検証)
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19K08574
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
齋藤 修 新潟大学, 医歯学系, 講師 (40752457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池主 雅臣 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40303151)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低体温 / 不整脈 / Wavelet |
Outline of Annual Research Achievements |
低体温療法は血行動態を不安定にすることなく良好な神経学的転帰に寄与する。一方で、雪山遭難や除雪中の事故などに伴う偶発的低体温症では治療抵抗性の致死的不整脈(低体温不整脈)を生じる危険がある。急速な体温上昇は血清カリウム濃度上昇などの弊害があり、低体温不整脈発症の予防法と緊急治療法の樹立が望まれる。本研究は、冠動脈灌流型拍動心筋モデルを用いて、心筋温度低下の過程で形成される不整脈基盤の電気生理学的特徴および低体温不整が治療抵抗性となる機序を解明し、緊急時の治療介入法の構築を目指すものである。 本年度の上半期は新型コロナ感染症拡大に伴う感染対策徹底のため実験室使用が制限され、周波数解析法のプログラム(短時間フーリエ変換法)構築と最適化を行なった。下半期から実験を再開し、頻回に生じる心室不整脈発生時における治療戦略の一つとして注目される非薬物療法(カテーテルアブレーション法)の検証を冠動脈灌流実験モデルを用いて行なった。深部心筋に対する治療効果の高いバイポーラー高周波通電法における安全指標を検証するためトータル89通電施行し、うち14通電(16%)で重篤な合併症に至る心筋断裂が観察された。心筋断裂の発生を予測するための指標を検討したところ、薄い心筋(14mm以下)、インピーダンスの大きな低下(25オーム以上の低下)が独立した予測因子であった。また、心臓交感神経亢進に関連する心室不整脈に対する不整脈治療薬(べプリジル)の抑制効果を検証したところ、血行動態を破綻させることなく心室不整脈をほぼ抑制し、有用性が示された。 これらの研究成果は国際的な学術雑誌にて公表し、関連学会・研究会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症拡大に伴う感染予防策徹底のため上半期の実験室使用を制限し、周波数解析プログラム(短時間フーリエ変換法)構築と最適化を中心に研究を進めた。下半期に実験を再開したが、実験数は当初想定のおよそ2/3にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き冠動脈灌流実験モデルを用いた実験を進めてデータを集積する。また周波数解析プログラム(連続ウェーブレット変換、短時間フーリエ変換)を用いて低体温時に見られる心室不整脈の周波数特性(周波数帯域、パワー値など)と除細動の有効性との関連を明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度上半期は新型コロナ感染症拡大に伴う感染予防措置徹底のため実験室の使用を停止し、周波数解析プログラムの構築と最適化を進めた。下半期から実験を再開したが、想定した実験数のおよそ2/3にとどまったため。また学術集会の中止・延期等により当初予定した支出が不要になったたため。 (使用計画)実験に使用する機材のアップデートおよび周波数解析の自動化により当初予定した実験数を残余期間内に完了できる見込みがついたため、実験用備品・消耗品の購入費および研究成果公表にかかる経費に充当する。
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