2019 Fiscal Year Research-status Report
左心耳における脳塞栓発生の危険因子同定と閉鎖術の術前治療計画システムの開発・検証
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19K08588
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
森野 禎浩 岩手医科大学, 医学部, 教授 (90408063)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 左心耳 / 心原性脳塞栓 / 経皮的左心耳閉鎖術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画調書の申請時点では、経皮的左心耳閉鎖術は薬事承認を受けていなかったが、令和元年年9月より保険償還された。それに伴い、研究課題2である、同治療の術前治療計画・術中支援ソフトウエアのニーズが高まり、必然的にこのテーマを中心に研究課題の遂行をすることが重要になった。令和元年中にCT画像 を用いた「バーチャル経食道エコービュー」機能を完成させ、VE-TEEという名称で配布可能となった。これは、臨床医のニーズに基づくインタ ーフェイスを持つ安価で汎用性の高い、パーソナルコンピューターで稼動するソフトウエアで、デバイス閉鎖術における術前・術中計画支援、治療成績向上、医師の負荷の軽減、 患者へのインフォームドコンセントなどに役立つものと考える。また、このシステムを用いた臨床研究が広く国内で進められることを期待している。このソフトウエアに言及したレビュー論文を、J.Cardiology に投稿し、既に早期掲載されている。本論文のFigureに、「バーチャル経食道エコービュー」機能でによる実際の左心耳計測の事例を採用した。また、このソフトウエアに関して、国内5箇所で講演をした。(令和2年度には多数の学会から招聘)。令和2年3月の日本循環器学会のシンポジウムで発表の予定であったが、8月に延期された。 研究課題3の多施設前向き試験による検証については、倉敷中央病院、東邦大学大橋病院、榊原記念病院にこのソフトウエアを配布した。令和元年度最後(令和2年3月)の日本循環器学会総会時に、これら施設の担当者を集め、臨床研究に関するミーティングを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い学会が延期となったため開催を見送った。令和2年度にオンラインで研究会議を開催する予定である。 研究課題1については、研究希望者の兼ね合いから、令和2年度からの研究開始とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、複数の研究計画のうち、研究課題2の同治療の術前治療計画・術中支援ソフトウエアの開発と検証のプライオリティーが高いので、臨床の普及速度を考慮し、特にこの研究を推進する必要があると判断した。連携研究者の岩手県立大学ソフトウエア情報学部土井教授らと、ソフトウエアの改良と製品化を進め、臨床認可からあまり遅れること無く、令和元年(平成31年)12月に一般ユーザーへの提供が可能な状況にした(ソフトウエア名称 VE-TEE)。ソフトウエア使用に必要なユーザーの使用マニュアルの作成や、使用方法習得のための操作ビデオを作成し、ホームページに掲載した(http://www.i-plants.jp/hp/)。現在、経皮的左心耳閉鎖術を行う施設で使用され始めている。当院での治療例については、全てこのソフトウエアを活用し、機能改良についてのディスカッションを行っている。 研究課題3である、このソフトウエアの多施設前向き試験による検証については、当院を含む計4施設にソフトウエアを配布済みで、現在、実際に試用されている。新型コロナウイルス蔓延の影響で学会などがキャンセルとなり、前向き研究のミーティングが開催できないでいるが、WEBなどを用いて研究内容を討議し、決定する予定である。 研究課題1については、研究テーマとする大学院生を選抜したところである。解析のためのCTの画像CDは揃えた。
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Strategy for Future Research Activity |
課題2,3のソフトウエアの改良と検証については、いずれも臨床研究的な側面が強く、新型コロナウイルス蔓延の影響を強く受けている。この問題は予測が困難な部分が多いが、運用の工夫で乗りきりたい。まずはWEB会議でソフトウエアの使用感や課題について広く意見をもらい、前向き研究のデザインを早期に決めたいと考えている。もう一つの影響として、緊急性が少ないうえ新規医療であることなどから、どの施設も治療症例数が思うように増えていない現実がある。研究デザインが固まリしだい症例数の見込みを概算し、さらなる施設に研究参加を依頼するかを早急に判断する必要がある。ソフトウエアの精度は、当院で使用する限り完成度が高く大きな問題を実感していないが、多くの施設の意見をフィードバックに生かし、ソフトウエアの改良を継続的に行いたいと考えている。研究課題1については、研究計画書の完成と院内のIRB申請から開始する。解析には、課題2で完成させたソフトウエアをそのまま活用する。左心耳が十分に造影され解析が可能な連続100例を抽出し、定量項目として、左心耳入口部径、対称率、深さ、体積、角度や、 櫛状筋の発達度、全貌の形態分類などの定性項目が考えられるが、実際に30例程度解析を進 めた時点で、解析項目に関するディスカッションを行い、潜在的に必要だが解析していない項目を追加し、研究のデザインを確定し、研究を推進する。
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Causes of Carryover |
実際の治療デバイスの承認のタイミングから、遅滞なくソフトウエアを完成させることが必要となり、研究課題2ソフトウエアの開発と配布に集中的に注力した。それにより、全体の研究スケジュールを変更することになった。研究課題1の実務を担当する大学院生のカリキュラムを考慮し、研究課題1に関しては研究開始を令和2年度にすることが妥当であると考えられた。もともと人件費は研究課題1に対し発生する計画であったため、研究開始を遅らせた分、令和元年度に人件費を計上しなかった。その他の経費に関しても、3D印刷のための材料費などの消耗品一式が研究課題1に紐付いて予算化されていたため、同様の理由で、令和2年度および3年度に計上させていただきたい。研究旅費については、海外出張1回について計上したが、その参加費は手続きの関係から令和2年度に計上することとしたため、予算より総額が小さくなった。また、令和2年3月の複数の大規模な学会が中止となったため(日本循環器学会および脳卒中学会の総会)、執行する予定の旅費が少なくなった。しかし、もともと令和2年度の出張予算を少なく申請していたのでそこに振り替えたいことと、さらに、新型コロナウイルスの影響が薄まり、成果の発表を予定する令和3年度に、国際学会での発表を含めた、十分な発表機会が必要であることを想定し、旅費を振り替えて使用させていただきたいと思います。
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Research Products
(3 results)