2019 Fiscal Year Research-status Report
川崎病冠動脈瘤における狭窄機序の解明と治療開発への応用
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19K08594
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Research Institution | Saitama Children's Medical Center |
Principal Investigator |
菅沼 栄介 埼玉県立小児医療センター (臨床研究部), 感染免疫科, 医長 (60408010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 智 埼玉県立小児医療センター (臨床研究部), 感染免疫科, 医長 (60385028)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 川崎病 / 冠動脈狭窄 / 血管平滑筋細胞 / 内膜増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度の研究計画として、まずLCWE誘導マウスにおける冠動脈内膜肥厚・冠動脈狭窄の定量的評価法の確立についての実験を行った。6週令のC57BL/6JマウスにLCWE(1000ug)を腹腔内注射し、4,8,16,24週後に全身麻酔下で解剖し(各n=5-8)心臓組織を薄切し、H&E、EVG、αSMA、PCNA染色を行った。コントロールはPBSを腹腔内投与した(各n=3)。各群における狭窄を認める個体(%)、内膜の厚さ(um)、内腔の面積(um2)、弾性線維断裂のスコアを評価し自然経過を観察した。 冠動脈の内膜肥厚は、LCWE投与2週後に冠動脈炎がわずかに認めることが予備実験で分かっている。さらに投与4週後には冠動脈全層の強い炎症を認め、血管内腔の狭小化を認めた。さらに16週後に狭窄はピークに達し、肥厚した内膜により完全閉塞していた冠動脈も観察された。肥厚した内膜は、αSMA陽性(血管平滑筋細胞あるいは筋線維芽細胞)かつPCNA陽性(増殖期)細胞で占められていた。24週後には増殖した新生内膜は膠原繊維により置換され器質化し、逆に血管内腔の拡大が観察された。さらに中膜の弾性線維は継時的に断裂数が増加した。また、観察期間中に死亡した個体はなかった。すなわち本マウスモデルにおいてLCWE投与16週後に内膜増殖がピークとなることが明らかとなった。 次にヒト冠動脈血管平滑筋細胞(HCASMCs)を用いた遊走能の検証を行った。予備実験として培養したHCASMCsを特殊プレートに10X104cell/ml播種し、LCWE濃度と至適観察時間の調整を行った。LCWE0.1u/mlで72時間の観察を行うと、間葉系細胞の増殖因子として知られるPDGF-BB(10ng/ml)に匹敵する細胞遊走を認めた。遊走能の定量的な検討は、IN CELL Analyzer2200を用いて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画として冠動脈狭窄の自然経過の観察とその定量評価法の確立を目標としていた。当初の計画通りの実験が遂行できたと判断している。さらに培養実験の予備実験まで実行できた点からも現時点ではおおよそ計画通りであると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画としては、前年度に行ったvivo実験において確立した冠動脈狭窄の自然経過の結果を踏まえて以下の実験を計画していく。 LCWEにより誘導された内膜増殖・狭窄を制御する因子を同定する試みである。1つ目の候補薬として血管平滑筋細胞の増殖抑制・分化誘導を促すレチノイン酸(RA:RAR-α、RXR作動薬)、2つ目の候補薬としては血管収縮抑制薬としてアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与を行い、LCWEによって誘導された冠動脈狭窄を抑制できるかを検証する。薬剤の投与期間は、冠動脈炎が始まるLCWE投与2週後から冠動脈狭窄がピークに達する16週までの14週間の投与を計画している。レチノイン酸(all trans retinoic acid)はコーン油に溶解して胃管による経口投与、ARB(ロサルタン)は飲料水に混ぜ、それぞれ投与を行う。両薬剤による冠動脈炎、冠動脈狭窄に対する効果を組織学的に検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度2-3月に予定されていた学術集会が、COVID-19のパンデミックの影響ですべて中止となり、その分の学会参加費や旅費等の支払いがなかったため、予定より少ない金額となりました。さらに同じ理由で研究試薬の購入に時間を要したことも使用費の減額の原因となりました。
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