2020 Fiscal Year Research-status Report
自己抗体マーカーによる睡眠時無呼吸症候群の脳梗塞・心筋梗塞発症予測とモニタリング
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19K08596
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
寺田 二郎 千葉大学, 真菌医学研究センター, 特任教授 (20400898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日和佐 隆樹 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (30260251)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 睡眠時無呼吸症候群 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画3年目の研究に関しては、睡眠呼吸障害を呈していると想定される症例の血液検体を用いて動脈硬化疾患に関連した自己抗体の同定・解析研究を進めた.これまで同定したCOPE抗体(Matsumura T, Terada J, et al, 2017 J Clin Sleep Med),抗NBL抗体(Matsumura T, Terada J, et al 2018 PlosOne)に続いて、本研究計画の中で2020年に新たに報告した自己抗体-抗SNX-16(Sorting nexin 16:Katumata Y, Terada J, et al 2020 Diagnostics)抗体についても解析を進めている. 具体的には,これまで自己抗体-抗SNX抗体を測定評価した睡眠時無呼吸症候群患者200名に対して,それぞれの抗体値が高い例が心血管イベント発生を生じているかについて調査を行った.診断検査時の血清で抗体価高値が判明している患者のうち,最大5年経過している例がいるため,外来診察及びカルテ上で追跡が難しい例は,電話で確認を行った. その結果,重大な動脈硬化性疾患を発症していたのは6例であった(脳梗塞2名,心筋梗塞2名,腹部大動脈解離1名,下肢動脈閉塞1名).しかし,当初の仮説と異なり,睡眠時無呼吸症候群診断検査時の血清で評価した抗SNX16抗体値と動脈硬化性疾患発症に相関はみられなかった. 考えられる要因として,観察期間が5年間と短いこと,今回評価した睡眠時無呼吸症候群患者の平均年齢は59才と若かったことも影響し心血管イベントを発症した例が6名と少なかったこと,また睡眠時無呼吸症候群に対していずれも持続的陽圧換気療法(CPAP)による治療介入があったことなどが挙げられた.今後は,複数の自己抗体値を組み合わせて動脈硬化性疾患発症の予測因子とすることが可能かを検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一に,COVID-19の流行拡大に伴う千葉県医療体制が最も深刻とされるフェーズ4-2に移行したため通常の診療が制限されてしまったことが挙げられる.特に睡眠時無呼吸症候群の診断検査である睡眠ポリグラフ検査を行う検査入院が制限されたことによる,新規対象患者が予定よりも多くみることができなかった.第二に,2020年度はCOVID-19診療最前線の呼吸器内科医として,多くの時間及び業務をCOVID-19診療にあてなければならなかったことが挙げられる.今回のCOVID-19の世界規模のパンデミックは,研究計画時点では予想していなかった出来事であり,多くの施設,臨床医に影響を及ぼしたことは避けがたい事象であった.しかし,診療以外の多くの時間を本研究に割いたこともあり,ある程度の研究の進展が得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
上述した,COVID-19流行拡大による通常診療への影響は予想できない面が多くあるが,すでに採取した血清を用いて,評価を進めていくようにしたい.また同定した抗体のなかで,抗NBL抗体が最も睡眠時無呼吸症候群に合併する動脈硬化疾患発症との関連性が考えられるため,測定簡易キットを作成しより簡便に測定評価できるようにする計画である.
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Causes of Carryover |
国内,千葉県のCOVID-19流行拡大により,本研究の対象である睡眠時無呼吸症候群の通常診療が大きく制限されたこと,また呼吸器内科医として感染症診療最前線にたっていたこと,緊急事態制限の延長により県をまたぐ学会発表などが難しかったことが挙げられる.
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