2019 Fiscal Year Research-status Report
ドライバー遺伝子陽性肺癌における新規治療戦略の開発
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19K08601
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小笹 裕晃 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80572015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 航 京都大学, 農学研究科, 助教 (10722184)
吉田 博徳 京都大学, 医学研究科, 医員 (60839710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺癌 / 分子標的治療薬 / 治療初期生存 / 抗癌剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、分子標的治療の初期生存を阻害し根絶できれば、耐性の発生を未然に防ぎ、肺癌根治を目指した薬物治療となりえると考えている。 分子標的薬治療の初期生存の研究をする上での現状の問題点は、研究のためのALK・ROS1・BRAF陽性の肺癌由来培養細胞株は入手が難しいことであるが、本研究を開始するにあたって、既にALK陽性肺癌6株、ROS1肺癌1株などを樹立している。今回、BRAF陽性肺癌細胞株を2株樹立することに成功した。BRAF陽性肺癌は、ROS1陽性肺癌と同様に、肺腺癌において2%の頻度で、樹立に成功した施設は数少ない。BRAF陽性肺癌に対する薬物治療は、BRAF阻害薬と MEK.阻害薬の併用療法であるが、この併用療法に対する初期生存の機序を解明することに非常に有用である。また、本研究テーマとは異なるが、この2株は同じBRAF陽性肺癌患者の治療前後の胸水から樹立した細胞であるため、獲得耐性機序の解明にも貢献できると考えている。 本研究の着想に至った経緯として、パイロットスタディとしてALK陽性肺癌におけるアレクチニブに対する初期生存にYAP1が関与していることをin vivoで確認することができたことであるが、その研究成果を報告した(Nat Commun. 2020 3;11(1):74)。ROS1陽性株においても同様に、ALK/ROS1阻害剤治療薬であるロルラチニブを暴露することによりYAP1が活性化すること、YAP1の活性化を抑制することによりロルラチニブの感受性が高まることをin vitroであるが確認することができた。この結果は、YAP1の活性化がALK陽性肺癌だけではなく、ドライバー遺伝子陽性肺癌に対する分子標的治療における初期耐性に共通して関与していることを示唆している。臨床応用できるYAP1阻害剤の開発に向けて、非常に重要な結果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度~2020年度第1期では、研究サンプルの樹立・初期生存因子の探索・候補因子の機能解析・治療初期生存におけるYAP1の機能解析を計画してきた。 研究サンプルの樹立では、BRAF陽性細胞株を2株樹立することができ計画通りに進んでいる。 治療初期生存におけるYAP1の機能解析では、ALK陽性肺癌における初期生存にYAP1の活性化が関与していることを証明し論文投稿を行った(Nat Commun. 2020 3;11(1):74)。ROS1陽性肺癌においても、in vitroでYAP1活性化がROS1阻害剤の初期生存に関与していることを確認することができ、in vivo実験に着手している。また、 EGFR陽性株・BRAF陽性株においてもin vitro実験を開始している。 初期生存因子の探索・候補因子の機能解析においては、樹立した培養細胞株を免疫不全マウス(NOD/SCID,SCID, BALB/nu)に移植し異種移植ヒト肺癌モデル(Xenograftモデル)を樹立し、マウスに標的治療薬を一定期間投与し、残存した少量の腫瘍と薬剤非曝露の腫瘍とをプロテオーム解析を用いて新たな候補因子を探索する計画である。現在、ALK陽性株とROS1陽性株をマウスに移植し、各々の標的治療薬を投与し残存した腫瘍から癌細胞を分離している行程である。標的治療薬の投与量の調整および少量の腫瘍からプロテオーム解析に必要な細胞を採取することに時間がかかっており、候補因子の同定およびその機能解析まで進んでいない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、主に研究サンプルの樹立・初期生存因子の探索・候補因子の機能解析・ドライバー遺伝子の種類を超えた展開を予定している。 研究サンプルの樹立については、1年間に2~3株の樹立を目標に行う予定である。 初期生存因子の探索・候補因子の機能解析においては、予備期間を含めて2020年度内に遂行することを目標とする。ただし、2020年度第2期までにプロテオーム解析までたどり着けない場合には、Xenograftモデルではなく、in vitro実験による探索に切り替えることも考慮している。この手法は既にALK陽性肺癌の治療初期生存において、YAP1が関与していることを発見した際に用いており、短期間で遂行可能である。 ドライバー遺伝子の種類を超えた展開については、先行して開始しているALK陽性株とROS1陽性株に加えて、EGFR陽性株およびBRAF陽性株で順次行う予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究計画のひとつである治療初期生存におけるYAP1の機能解析を第1~2期まで予定していたが、順調に実験が進捗し2019年8月までに研究を終了することができたことが大きな要因である。また、研究サンプル樹立が比較的容易にできたため、細胞培養にかかる費用が抑制できたことや、in vitro実験における条件設定が安定したことにより各試薬を節約することができたことも要因である。 次年度使用額については、やや進捗が遅れている2020年度の研究計画にある初期生存因子の探索・候補因子の機能解析に使用したいと考えている。具体的には、マウス購入費用や分子標的治療薬などの購入費用に使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)