2021 Fiscal Year Annual Research Report
慢性好中球性気道炎症のエンドタイプ解明に向けた基盤研究
Project/Area Number |
19K08621
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
増子 裕典 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50758943)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 喘息 / フェノタイプ / 好中球性気道炎症 / 原発性線毛機能不全症 |
Outline of Annual Research Achievements |
喘息は遺伝的要因と環境的要因が相互に影響して病態を形成する多因子疾患である。好酸球性気道炎症を主とした患者群がいる一方で、好中球性気道炎症が病態の中心を占める喘息フェノタイプも存在する。本研究は、慢性の好中球性気道炎症を呈し、ときに非好酸球性喘息やCOPDとの鑑別が困難な臨床症状を呈する遺伝性疾患:原発性線毛機能不全症(PCD)、に着目することで、喘息やCOPDの分子病態の多様性を理解し、特に好中球性炎症をドライブする新たなエンドタイプの発見を試みることが目的である。 3つの独立した日本人成人集団(喘息患者1158人、非喘息健常者2203人)を研究対象とした。ClinVarデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/)に基づき、5つのPCD関連遺伝子において分子的帰結を引き起こす12SNPを選択し、これらのPCD関連遺伝子の累積効果としてPCD-遺伝リスクスコア(GRS)を計算した。さらにPCD-GRS、対標準1秒量、喘息発症年齢の3変数を用いた2段階クラスター分析を行った。その結果、PCD-GRS値が平均的なクラスターと比較して、PCD-GRS値が高いクラスターと低いクラスターは、喘息発症が遅い、女性が多い、肺機能が保たれている、IgE反応性と血中好酸球数で決定する2型免疫の特徴が少ない、という全体的に似た特徴を有していた。肺におけるDNAH5の発現量的形質座(eQTL)を表すSNPであるrs1530496の対立遺伝子頻度は、PCD-GRS高値とPCD-GRS低値の喘息クラスター間で最大の統計的有意差を示した(p = 1.4×10-15 )。DNAH5の異常発現に関連する遺伝子型は、おそらく粘膜線毛運動クリアランスの障害を介して、成人発症喘息の異なる表現型の病態の根底にある可能性がある。本研究内容については現在投稿中である。
|