2022 Fiscal Year Annual Research Report
肺がんと血小板の関係に着目した新たな分子標的薬耐性機構の解明と克服
Project/Area Number |
19K08622
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 広祐 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50644291)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原発性肺がん / 血小板 |
Outline of Annual Research Achievements |
循環血液中の血小板は血栓形成や止血以外に、がんの浸潤・転移おいて重要な役割を果たしているとの報告がある。例えば、大腸がんや乳がんにおいて上皮間葉移行(EMT)を誘導し浸潤・転移を促進することが報告されている。血小板が、がんの薬物療法(分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、殺細胞性化学療法)感受性にどのように影響するのかは分かっておらず、本研究課題では、肺がんの薬剤感受性における血小板の役割を明らかにすることを目的としている。
健常者のボランティアの末梢血から血小板を精製し、非小細胞肺癌細胞株と共培養をする系を確立した。非小細胞肺がん細胞株を血小板と共培養することで、細胞株の形態変化が生じるとともに、免疫細胞染色によりCDH1発現低下、VIM発現上昇が認められ、がん細胞にEMTが誘導されていると考えられた。EMTは肺がんの分子標的薬の耐性化に関与しているとの報告があり、血小板によるEMT誘導が、肺がん細胞の薬剤感受性を低下させる可能性が示唆された。
そこで、販売されている複数の抗血小板薬の存在下でEGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞株と血小板を共培養し、抗血小板薬の併用によりEMTの誘導が抑制されるかを検証した。少なくとも今回使用した細胞株では、有意な誘導抑制は認められず、抗血小板薬の効果は乏しい結果であった。共培養の系は確立されており、今後はEGFR阻害薬以外の分子標的薬や殺細胞性化学療法の感受性に関しても検討を進めたい。
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