2021 Fiscal Year Annual Research Report
気道ウィルス感染におけるPD-L2の意義解明とそれに基づく新規治療法の探索
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19K08626
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松元 幸一郎 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60325462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 聡 九州大学, 大学病院, 講師 (50380530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルス / 2本鎖RNA / インターフェロン / PD-L2 / PI3キナーゼ / 呼吸器 / PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
気道ウイルス感染はCOPDや気管支喘息の増悪の誘因となるが、その早期排除の方策は確立していない。我々はウイルス由来の2本鎖RNAによって気道上皮に発現し、抗ウイルス免疫を減弱させる免疫チェックポイント分子PD-L1に着目し、PI3キナーゼデルタ阻害薬がそのPD-L1発現を抑制することを見出し、抗ウイルス免疫を回復させる創薬シーズと位置付けた(先行研究)。ところが、マウス実験系においてPI3キナーゼデルタ阻害薬(以下デルタ阻害薬と表記)はもう一つの分子PD-L2の発現をPD-L1と逆に増強することを見出した。この制御機構の違いを解明することを目的として本科研費を取得し研究を遂行した。ヒト初代気道上皮培養細胞系において2本鎖RNA刺激によるPD-L1発現をデルタ阻害薬は抑制しPD-L2発現に対しては増強することを確認した。PI3キナーゼデルタmRNAノックダウンでも同様の結果を得た。また、2本鎖RNA刺激により上皮からI型およびIII型インターフェロンが産生されるが、デルタ阻害薬はこのインターフェロン産生をTBK1および転写因子IRF3のリン酸化亢進を介して増強することを見出した。IRF3ノックダウンによってインターフェロン産生の抑制のみならず、PD-L2の産生増強反応も消失することから、2本鎖RNA刺激によるPD-L2産生へのデルタ阻害薬の作用はインターフェロン産生の増強を介することが考えられた。このデルタ阻害薬のPD-L2発現増強作用はCOPD患者や喘息患者由来の気道上皮細胞でも同様に認められた。さらにヒトメタニューモウイルスを感染させて誘導されるPD-L2発現においても同様に認められた。これらの実験結果から、2本鎖RNAやウイルス感染によるPD-L1とPD-L2誘導へのPI3キナーゼ阻害薬の効果の違いはインターフェロン依存性の違いに基づくことが明らかになった。
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