2019 Fiscal Year Research-status Report
特発性肺線維症病態におけるミトコンドリアUPRの役割
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19K08632
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
原 弘道 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (70398791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90468679)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリアUPR / IPF |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアは、傷害蛋白の蓄積やミトコンドリア傷害などのストレスに対し、ミトコンドリアUnfolded Protein Response (UPR)と呼ばれる適応反応により傷害蛋白の修復、分解を促進し、細胞内恒常性維持に重要な役割を果たしている。加齢により傷害蛋白は蓄積し、ミトコンドリアの機能は低下することから、ミトコンドリアUPRは老化や老化関連疾患の病態と関連する可能性が高い。老化関連呼吸器疾患である特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis:IPF)は、傷害蛋白の蓄積、ミトコンドリア傷害が病態形成に重要であるため、ミトコンドリアUPRがIPFの病態に関与している可能性が高い。本研究では、ヒト肺組織、分離培養細胞(気道上皮細胞、肺胞上皮細胞、線維芽細胞)、マウスモデルを用いて、IPF病態におけるミトコンドリアUPRの役割を明らかとし、さらにはIPFの新規治療開発の知見を得ることを目的とした。 本年度は、まず、IPF肺組織におけるミトコンドリアUPRの評価を行った。肺癌手術肺検体を用いて、IPF肺組織のSSBP-1の免疫染色を行った。IPF肺組織ではコントロールと比べSSBP-1の発現が低下しており、ミトコンドリアUPRが低下、あるいは不十分である可能性が示唆された。IPFと同じ老化関連呼吸器疾患であるCOPDではSSBP-1は低下しておらず、SSBP-1低下はIPFに特異的であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はヒトIPFの病態を明らかとするための検討であるため、臨床検体において正常肺組織とIPF肺組織のミトコンドリアUPRの違いを確認することが重要である。本年度の免疫組織染色の結果から、ミトコンドリアUPRの重要な制御因子であるSSBP-1の発現がIPF肺組織で低下していることを確認した。UPR制御因子は複数存在する可能性があり、近年、新たにUPR制御因子として報告されたATF-5についてもSSBP-1と同様に免疫組織染色にて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
SSBP-1の低下は細胞死感受性を増強し、また、TGFβによるEMTを促進することがこれまで報告されている。細胞死、EMT、いずれもIPFの病態に重要であり、SSBP-1低下はIPFの病態に重要な役割を果たしている可能性がある。そこで、肺組織のホモジェネート、分離肺細胞を用いて、SSBP-1,ATF-5のmRNA発現、蛋白発現を正常肺とIPF肺で比較検討する。(リアルタイムPCR、ウェスタンブロッティング)また、ミトコンドリアUPRにより誘導されるHSP60、10、70、90、Sirtuin 3についても同様の検討を行う。いずれの検討もコントロール、COPDと比較する。
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