2019 Fiscal Year Research-status Report
一般細菌・抗酸菌・真菌の網羅的菌叢解析による下気道感染症の病態の解明
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19K08639
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
矢寺 和博 産業医科大学, 医学部, 教授 (40341515)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細菌性肺炎 / 慢性下気道感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は慢性下気道感染症や肺炎、胸膜炎に対してクローンライブラリー法を用いたSanger法による細菌叢解析を継続して行った。慢性下気道感染症では気管支肺胞洗浄液から抗酸菌特異的な16S ribosomal RNA遺伝子の可変領域を用いた解析を行うことで非結核性抗酸菌が複数菌種検出される症例があることを確認しており、この非結核性抗酸菌が複数菌種検出される症例と単一菌種のみが検出される症例とにおいて画像所見、臨床症状の差異について比較、解析を継続して行った。本手法の利点は、複数菌種を同時に評価できることに加えて、通常は抗酸菌の菌種同定を行う場合、菌が培養されるまで数週間かかりその後も同定を行うまでにさらなる時間を要するが、本手法は検体採取後数日間で菌種の推定を行うことが可能となる。これらの症例に対してはE341F、E907Rをプライマーとしたクローンライブラリー法を用いたSanger法による細菌叢解析、また、真菌を検出するための18S rRNA遺伝子を用いた解析も併行して行い慢性下気道感染症に対して細菌学的観点から継続した症例集積、解析を行った。 また、Sanger法にクローンライブラリー法を組み合わせた解析方法をreference dataとして次世代シークエンサー(NGS)を用いた解析方法の結果(16S rRNA領域において)とを比較検討した。この結果は、NGS解析ではプライマー設定、クラスタリング閾値といった条件も関与して菌種レベルで識別不能な細菌(Streptococcus属、Klebsiella属の一部等)があることが確認されたため、クラスタリング閾値を上げて解析を行い、一部の菌種(S. pseudopneumoniaeとS. oralis等)では識別可能になることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規の慢性下気道感染症症例について、継続して症例集積、解析を行うことができている。また、Sanger法の検体と同一検体を用いたNGSを用いた解析については、現在結果の解析、まとめを行うことができているため、おおむね順調に進展していると評価した。胸膜炎については2019年度の症例数が少なかったが、今後Streptococcus anginosus groupによる細菌性胸膜炎における嫌気性菌の関与について前向きに検討を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、症例、臨床データ、画像データ及び臨床検体の蓄積を継続する。18S rRNA遺伝子を用いた真菌における網羅的菌叢解析法については精度評価、相同性検索を行うデータベースについてさらなる検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
計画通り使用できており、余剰金については次年度の試薬購入費として使用予定である。
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