2019 Fiscal Year Research-status Report
間質性肺炎患者における羽毛抽出抗原を用いた沈降抗体反応の陽性率とその特徴の解析
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19K08641
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Research Institution | Tokyo National Hospital (Clinical research) |
Principal Investigator |
成本 治 独立行政法人国立病院機構東京病院(臨床研究部), 臨床研究部, 医長 (20637011)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 過敏性肺炎 / 羽毛 / 沈降抗体 / 間質性肺炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の吸入抗原に対するIII型およびIV型アレルギー反応で起こる過敏性肺炎は診断が非常に難しい疾患である。なかでも慢性の経過をとる慢性過敏性肺炎は、画像所見において特発性間質性肺炎との鑑別が困難であり、慢性進行性であることから環境の隔離や暴露による変化も目立って呈さないことも多く、診断が極めて難しい。原因抗原は様々報告されているが日本においては鳥関連過敏性肺炎が6割程度を占めると報告されている。本邦では、2003年に東京医科歯科大学稲瀬医師らにより羽毛製品に関連した過敏性肺炎の症例がはじめて報告された。羽毛による過敏性肺炎は潜在的に相当数存在することが疑われるものの、それらに対する検査が保険収載されていない現状では、慢性的な経過の多い鳥関連過敏性肺炎のかなりの割合が特発性間質性肺炎として診断、治療されている可能性がある。そこで、本研究では鳥関連過敏性肺炎の実態を明らかにし、その病態解明に繋げることを目標とした。 まず、我々は羽毛を脱脂洗浄し、羽毛由来の抗原を抽出した。 過敏性肺炎が疑われる115名に対して羽毛抽出抗原に対する沈降抗体の検査を行った。 そのうち31.3%(36/115)が羽毛抽出抗原に対する沈降抗体が陽性であった。一方で ハト糞由来抗原に対して沈降抗体陽性であったのは7.0 % (8/115)しかいなかった。 参加者のうち48人が、Vasakova らによる2017の基準においてconfident HP without biopsy あるいは probable HPと診断できた。そのうち 66.7% (32/48)が羽毛抽出抗原に対する沈降抗体陽性であった一方、16.7% (8/48) しかPDEに対する反応は陽性でなかった. 次に抽出した抗原と患者由来の血清を用いてwestern blotを行ったところ、いくつかの共通するバンドを検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように共通するバンドをある程度得られるまでになっており、次の項目に記すような次の課題はあるものの、今のところ症例の集積は順調である。 目標の1.間質性肺疾患の中で、羽毛抽出抗原に対して沈降抗体陽性となる症例がどの程度存在するか、その実態を明らかにする。に関しては達成している。 2.羽毛抽出抗原に対して沈降抗体陽性となる症例の中で、既存のハト糞と交差反応を認めない症例がどの程度存在するか、その実態を明らかにする。についても明らかとなった。 3.新規抗原の同定を行う→これについて今後行ってゆく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はいくつかの共通するバンドを質量分析によって検査を行い、原因となる特異抗原を検同定する。二次元電気泳動にて精製して、質量分析によりアミノ酸配列まで決定したいと考えている。将来的には、さらにそのたんぱく質をもとに特異的なELISA、リンパ球刺激反応の系も立ち上げたい。
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Causes of Carryover |
次年度に質量分析がありその分にかなりの予算が必要であると予想されたため次年度に多めに持ち越すことにした。 また、学会がキャンセルとなった分も持ち越しとなった。
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