2019 Fiscal Year Research-status Report
MET阻害とワクシニアウイルス療法を併用した肺癌に対する複合的分子標的・免疫療法
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19K08653
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
金地 伸拓 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (60403789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 貴史 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432911)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺癌 / 腫瘍溶解性ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであるMDRVV003がヒトおよびマウス肺癌細胞株の細胞死を誘導するかどうかを評価した。使用した細胞株は、ヒト肺腺癌(A549, H1975, H2228, H23)、ヒト扁平上皮癌(EBC1, RERF-LC-A1, VMRC-LCD)、ヒト小細胞癌(H69, H209)、およびマウス肺腺癌(CMT64/61, LLC-1, 3LL)である。MDRVV003をMOI 0~10で検討した結果、細胞株により感受性は様々であった。A549, H1975, H23はMDRVV003に高感受性であり、MOI 1で細胞数は半数以下に減少した。一方、H2228とVMRC-LCDはMOI 10でも細胞死がほとんど誘導されず、非感受性であった。3LLは計画当初使用予定ではなかったが、他のマウス肺癌細胞株がMDRVV003に感受性が低かったために追加した。しかしながら3LLも低感受性であった。MDRVV003に対する感受性のIC50を算出すると、A549でMOI 0.4, EBC1でMOI 5.0, 3LLでMOI 3.3であった。 MET阻害薬tepotinibに対する反応も検討した。IC50は、A549で4789nM, EBC1 388nM, 3LLで4306nMであった。 各細胞株の蛋白発現をウエスタンブロットで評価した。全ての細胞株において、ERK発現を認めた。活性化ERKの一指標であるphospho-ERKは、H23, EBC1, RERF-LC-A1, LLC1で比較的高発現であった。 B6マウスに3LLを接種し、腫瘤が形成された時点でMDRVV003およびtepotinibを投与した。MDRVV003接種群では非接種群と比較して腫瘍増大が抑制された。またtepotinib投与によっても腫瘍増大は抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた11種類の細胞株でMDRVV003の感受性を検討できた。結果をふまえて、さらにマウス肺腺癌細胞株3LLを加えて検討した。MET阻害薬tepotinibの感受性も評価できた。ERKのウエスタンブロットも施行した。 B6マウスにおける抗腫瘍効果の検討には、MDRVV003に対する感受性が高いマウス肺癌細胞株を用いる予定であった。しかし見つからなかったため、3LLを用いた。この点において、マウスでMDRVV003が抗腫瘍効果を発揮するかどうか確信が持てない状況であったが、結果としては、非接種群と比較して腫瘤形成は抑制された。マウスにおいてtepotinibの抗腫瘍効果も確認できた。 以上の経過、研究結果をふまえて、課題の進捗状況は、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスにおけるMDRVV003の抗腫瘍効果の機序について、病理学的、免疫学的に検討する。これには標本作製、免疫染色、フローサイトメトリーなどを含む。具体的には、まずはマウスに2つの腫瘤を形成させ、一方の腫瘤にのみMDRVV003を接種する。MDRVV003を直接接種した腫瘤と非接種の腫瘤の大きさ、リンパ球浸潤などの病理像について検討する。 今後の研究推進における、ひとつの懸念は日本における新型コロナウイルス感染症の拡大である。研究以外の職務の増加(COVID-19患者の対応)、MDRVV003の作製困難などが生じれば、本研究推進に支障をきたす可能性はある。新型コロナウイルス感染症の流行が早期に収束することを願うばかりである。
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Causes of Carryover |
次に予定しているマウス実験を行うには少額であり、購入できないため、次年度にマウスや抗体など必要物品を購入する際の足しにすることとした。
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