2020 Fiscal Year Research-status Report
Club細胞の運命転換に着目した前癌病変の起源細胞の同定及び発生機構の解明
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19K08655
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松尾 顕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 学術研究員 (50735074)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 運命転換 / 脱分化 / 可塑性 / 呼吸器 / 基底細胞 / 扁平上皮癌 / 肺癌 / 器官形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の発生母地である扁平上皮化生は、分化した細胞が別の分化した細胞へ運命転換する現象であるが、その起源細胞及び発生機序は不明瞭である。私達は、マウス生体内で、Notchシグナル標的遺伝子の不活性化により、気管Club細胞が基底細胞へ運命転換することを見出した。そこで、本研究では、Club細胞の基底細胞への運命転換が、扁平上皮化生及び化生病変による発癌(扁平上皮癌)に関与するかを細胞系譜解析と単1細胞遺伝子発現解析(single cell RNA sequencing, scRNA-seq)を用いて検証することを目的とした。 結果として、1)scRNA-seqと細胞系譜追跡を用いた解析により、Club細胞から基底細胞への運命転換を系譜追跡するが可能になった。Club細胞から運命転換した基底細胞(iB細胞,induced basal cell)はヘテロな集団であることを見出した。さらに、2)scRNA-seq及び細胞系譜解析により、iB細胞の一部の細胞集団が扁平上皮細胞のマーカー遺伝子を発現していることを明らかにした。また、iB細胞に特異的に発現している遺伝子の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)Club細胞から基底細胞への運命転換過程の細胞の同定を行う目的で、scRNA-seqを用いて得られた情報を生体内で評価した。scRNA-seqを用いて得られた情報(1細胞レベルでの遺伝子発現情報)と生体内の運命転換に関与する細胞集団(空間的位置情報)を比較しした。scRNA-seqを用いて得られた情報を生体内で評価した。これまでに、基底細胞分化マーカー遺伝子が運命転換過程の細胞に発現していることを明らかにした。さらに、iB細胞の一部の細胞集団が扁平上皮細胞マーカー遺伝子を発現していることを明らかにした。この扁平上皮細胞マーカー遺伝子は、基底細胞からClub細胞へ分化する系譜の細胞に発現することが報告されている。以上より、Club細胞から基底細胞への運命転換を系譜追跡することに成功した。 2) scRNA-seqを用いて、運命転換の分子機構を明らかにすることを試みた。scRNA-seqを用いることにより、運命転換に関与する細胞集団(Club細胞、中間体の細胞、運命転換した基底細胞、内在性の基底細胞)の1細胞レベルでの遺伝子発現を明らかにした。さらに、遺伝子発現情報を基に、擬似時間解析(pseudotime analysis)を行ったところ、iB細胞は、内在性の基底細胞とは異なる細胞集団を形成していた。また、運命転換を制御しているシグナル機構の同定も試みた。Notchシグナルが運命転換を制御することが明らかになった。さらに、iB細胞得意的に発現する遺伝子を同定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、新たに同定に成功したiB細胞特異的遺伝子がどのようにClub細胞から基底細胞への運命転換に寄与するか明らかにしていく。
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