2019 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器疾患における一酸化窒素合成酵素系の役割の多様性の解明
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19K08657
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
筒井 正人 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70309962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 俊博 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50244330) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / 肺気腫 / 遺伝子欠損マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
肺には生理的状態および病的状態において3つの一酸化窒素(NO)合成酵素アイソフォーム(nNOS, iNOS, eNOS)がすべて発現している。しかし、呼吸器疾患におけるNOSs系の役割は未だ不明な点が多い。私達は、肺線維症や肺高血圧の病態ではNOSs系は有益な役割を果たしているが、気管支喘息の病態では正反対の有害な役割を演じていることを見出した。この結果から、同じ肺の病気であってもNOSs系の役割は病態が異なれば異なることが示唆された。この自身の研究成果を踏まえて、本研究では、呼吸器疾患におけるNOSs系の役割の多様性を解明することを着想した。 最初に、肺気腫におけるNOSs系の役割を、エラスターゼ誘発肺気腫モデルを用いて検討した。8~10週齢の雄の野生型マウス、single nNOS-/-、iNOS-/-、eNOS-/-マウス、およびtriple n/i/e NOSs-/-マウスを実験に使用した。エラスターゼ投与3週後の血漿NOx値は、野生型マウスと比較してtriple NOSs-/-マウスで最も低値であった。エラスターゼ投与3週後にすべてのマウスにおいて肺気腫病変形成が認められたが、その程度は野生型マウスに比してtriple NOSs-/-マウスで最も高度であった。気管支肺胞洗浄液中の総細胞数、好中球数、およびリンパ球数はtriple n/i/eNOSs-/-マウスで最も増加していたことから、エラスターゼ投与によりtriple n/i/eNOSs-/-マウスで高度な炎症が誘導されていることが示唆された。sodium nitrate 45 mMの経口投与はエラスターゼ投与triple n/i/eNOSs-/-マウスの血漿NOx値を増加させ、肺気腫を軽減させた。以上の結果より、肺気腫病変形成においてNOSs系は抑制的に作用していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、呼吸器疾患におけるNOSs系の役割の多様性を解明することである。その目的のために、肺気腫、急性肺障害、および敗血症性ショックにおけるNOSs系の役割をトリプルn/i/eNOSs-/-マウスを用いて検討することを計画した。最初に肺気腫におけるNOSs系の役割を検討したが、これまでに得られた実験結果から、肺気腫病変形成においてNOSs系が抑制的な役割を果たしていることが明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまで、エラスターゼをマウスの気管支内に投与して肺気腫を誘発して研究を行ってきたが、その研究の過程で、トリプルn/i/eNOSs-/-マウスにはエラスターゼを投与しなくても自然発症の肺気腫が認められることを最近見出した。今後は、その点についても研究を進めていく予定である。加えて、トリプルn/i/eNOSs-/-マウスに見られる肺気腫の分子機序をRNA sequencing、定量的real-time PCR、Western blottingなどで解析する予定である。
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