2021 Fiscal Year Annual Research Report
Keap1-Nrf2系制御による肺気腫形成機序解明とCOPD新規治療戦略への応用
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19K08660
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
浅井 一久 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (10382053)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / Nrf2 / アイリシン / バルドキソロン / タバコ / マイオカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は末梢気道病変と気腫性病変が複合的に作用し、正常に復することのない気流閉塞を示すため、咳・痰・労作時呼吸困難などの症状を伴うことが多い。今日のCOPD治療は、気管支拡張薬による低下した残存呼吸機能の緩和に過ぎず、末梢気道病変(末梢気道のリモデリング)や気腫性病変などの組織破壊の予防治療や再生治療は確立されていない。 我々の先行研究では、気道上皮におけるnuclear factor erythroid 2-related factor2 (Nrf2)の発現は健常者に比較してCOPD患者では低下していた。また、タバコ煙曝露COPDモデルマウスを用いた運動の気腫化抑制実験において、マイオカインであるIrisin(アイリシン)を介してNrf2の発現増強による気腫化抑制効果を見出している。さらには、検診クリニックにおける健常喫煙者コホートにおいて気腫化進行にNrf2遺伝子多型が関与する結果を得ている。これらの結果は、Nrf2の発現増強・活性化がCOPDの気腫化抑制・再生の治療戦略となる可能性があることを示唆している。 バルドキソロンは、Nrf2をkeap1より解離させて、Nrf2の活性化を促して、下流の抗酸化タンパク質の発現を調整、亢進させて、作用することが知られている。バルドキソロンの誘導体であるバルドキソロンメチルは、糖尿病性腎症患者を対象とした第2相臨床試験においてGFR(糸球体濾過量)の有意な改善と忍容性を示し、実臨床への導入が検討されている。我々の先行研究では、CODP病態における酸化ストレスの寄与、Nrf2の活性低下が推察されており、2021年度はバルドキソロンのkeap1への作用をタバコ煙曝露COPDモデルマウスでの気腫化抑制のターゲットとなる気道上皮を用いたin vitro実験の結果を踏まえてタバコ煙曝露COPDモデルマウスでのNrf2発現増強・活性化剤の気腫化抑制効果の評価を行う計画し、遂行した。
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