2019 Fiscal Year Research-status Report
肺線維症患者に対する間葉系幹細胞療法の臨床応用を目指した有効な新規マーカーの探索
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19K08661
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
熊本 牧子 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10623522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 利洋 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00595712)
室 繁郎 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60344454)
北畠 正大 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60457588)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞療法 / 特発性肺線維症 / PTPRR / オーダーメード治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(以下 IPF)は進行性で、5年生存率20-30%と予後不良な疾患であるが、現時点で存在する治療薬は進行速度を緩徐にさせる抗線維化薬のみであり、より有効な治療が必要とされている疾患である。 これまでに我々は、ブレオマイシン肺線維症マウスモデルのみならず、IPF患者由来の肺線維芽細胞を移入することで作成された、よりIPFの病態に即したヒト化肺線維症モデルにおいても、脂肪由来間葉系幹細胞(以下ASC)が抗線維化作用を発揮することを証明している。一方で、その効果の程度は、ヒト化肺線維症モデルに用いたIPF患者由来肺線維芽細胞によって異なり、個々のIPF患者に対するASCの有効性と関連することが推測される。ASC療法の効果が期待されるIPF患者の選定するためのマーカーを探索するため、今回我々は、3人のIPF患者由来の肺組織の、線維化部位と非線維化部位をマイクロアレイで解析した。今後、それぞれの患者の肺線維芽細胞を用いてヒト化肺線維症モデルを作成し、ASCの有効性を検討し、有効性に関わる因子を探求する予定である。 また、我々は、ASCが有効な肺線維芽細胞とASCとの共培養によって、PTPRR(Protein Tyrosine Phosphatase Receptor Type R)遺伝子の発現が上昇することをすでに見出しており、PTPRR遺伝子が抗線維化に関わると予測した。そこで今回、肺線維芽細胞にPTPRR遺伝子を過剰発現させたところ、線維化関連遺伝子の発現を抑制することも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IPF患者の肺検体は当初の目標程度の速度で順調に提供いただいており、現在で35検体確保できている。肺線維芽細胞の培養手技も改良し、安定して細胞をストックすることが可能となっている。肺細胞のマイクロアレイによる解析もすでに実施済みであり、ある程度順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、マイクロアレイを行った、IPF患者由来の肺線維芽細胞を用いてヒト化肺線維症モデルを作成し、ASCの有効性を検討し、有効性に関わる因子を探求する予定である。 また、線維化抑制因子であると考えられるPTPRR遺伝子は、シグナル伝達経路MAPKの制御分子であることから、MAPK経路の線維化制御について解析予定である。 さらに、ASCはin vitroにおいて、cell-cell contactなしに肺線維芽細胞における線維化関連遺伝子発現を抑制したことから、ASCから分泌される因子が抗線維化作用にかかわっていると考えられ、この因子をin vitro培養系で検索する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で、年度末に研究が予定通り進まないこともあり、次年度使用額が生じた。次年度は繰り越した助成金と合わせて、学会発表なども積極的に行いたいと考えている。
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