2019 Fiscal Year Research-status Report
COPD身体活動性評価法の精度向上と個別化治療法の開発
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19K08662
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
南方 良章 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (80295815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 正典 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (10347601)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | COPD / 身体活動性 / 歩数 / モチベーション / 3軸加速度計 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する適切な身体活動量の目標値を提供するためには、個々の身体活動量の標準値に基づき目標値設定必を行う必要がある。今回歩数に着目し、関連因子を用いて標準値を算出しうる歩数予測式の作成を行なった。3軸加速度計で2週間の身体活動性測定歴があり、その時のスパイロメトリー、呼吸困難感(mMRCスケール)、身体計測のデータのある患者162例を後方視的に収集した。加速度計で測定した歩数は、重回帰分析にて年齢とmMRCが関連し、また、歩数の分布を正規分布化した後stepwise法を用いると、mMRCと最大吸気量(IC)が関連因子として抽出されたため、年齢、mMRC、ICの3因子から多重直線回帰式を作成した。その結果、「歩数 = (-0.79 x [年齢] -1.595 x [mMRC] + 2.078 x [IC] + 18.149 )3」の式が得られた。この結果はInt J Chronic Obstructive Pulmonary Disease誌に掲載された。 COPD患者の身体活動性向上のモチベーションを高めるため、我々は以前より酸素療法患者にフライングディスク・アキュラシー(FD)競技を導入し、その安全性と忍容性を検証してきた[Honda Y. Clin Res Pulmonol 2014]。この競技をより安全に行うために、競技時に口すぼめ呼吸を導入し、その効果を評価した。その結果、口すぼめ呼吸により酸素療法患者(15例)、非酸素療法患者(10例)ともに、経皮酸素飽和度の低下は有意に抑制でき、その機序のひとつとして、競技中の息止め時間の短縮効果が関与している可能性を明らかにした。この結果はMed Clin Sci誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、身体活動性の改善に向けた検討計画のうち、予測式作成と効果的介入法の検討を中心に行った。身体活動性の指標のうち、歩数は市民に親しみのある指標であり、厚生労働省でも健康増進のための目標御数値を提供している。今回、後方視的であり検討因子数は限られた範囲ではあったものの、COPD患者の歩数簡易予測式を作成できたことは大きな収穫であった。この予測式から算出される個々の患者の標準値をもとに、目標値設定法の検証を行うことで、COPD患者の身体活動性向上に向けた個別化療法への道が開けると考える。 フライングディスク・アキュラシー競技は、全国の障害者スポーツ大会の正式種目のひとつであるが、COPDなどの内部障害者は対象とされていない。現時点では全国4県でCOPD患者に実施されてはいるが、認知度は決して高くはない。今回、安全性をより高める方法が確認できたことで、さらに普及しやすい環境を構築することに貢献できた。FD競技の安全性と有用性が認知され普及すれば、COPD患者が気軽に参加しやすい環境となり、身体活動性維持・向上につながりうると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
加速度計を用いた測定の精度向上に対し、季節の影響や活動性指標の差の検討、加速度計非装着時間の処理対策などを行う。季節の影響に対しては、同一患者で、対照となる気温(17.5~22.5℃)とそれ以外の気温での身体活動性記録を複数例収集し、対象気温に対する他の気温での活動性の比率を指標として、気温の差による身体活動性の差を検討する。活動性指標の差に対しては、強度別活動時間を測定できる加速度計と種類別活動時間を測定できる加速度計を同時に装着し、強度別活動特に1.0~1.5 metabolic equivalents (METs)の活動 (sedentary behavior)の時間が、どのような種類の行動を反映しているのかの詳細検討を行なう。非装着時間の処理法として、加速度計より得られた生データから非装着時間と判断するための条件を設定し、ある一定以上の装着時間を確認できる方法を検討する。 身体活動性改善に向けた取り組みとして、歩数目標値設定方法の検討、目標値提供による改善効果の検討、より多くの因子を用いた身体活動性関連因子の検討、複合的介入による身体活動性の改善と改善に関連する因子の検討などを予定する。まず、初年度に作成できた歩数予測式をもとに、歩数目標値の設定法を検討し、さらに目標値提供による歩数増加効果の検討と、目標値設定法の妥当性を検証する。より多くの因子として、身体計測、個人歴、症状、生理学的検査、生化学的検査、運動耐容能、筋力、併存症等を測定し、身体活動性との関連を検討する。様々な医療介入による身体活動性の改善効果を調査し、どのような状態の患者で改善しやすいのか、また、どの因子の改善が関与しているのかなどを検討する。
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Research Products
(14 results)
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[Book] COPD2019
Author(s)
金子 猛、三嶋理晃
Total Pages
360
Publisher
中山書店
ISBN
978-4-521-74529-9