2020 Fiscal Year Research-status Report
臓器内代謝物変化から紐解くCKD合併認知機能低下・筋消耗の発症機序の解明
Project/Area Number |
19K08669
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 恵美子 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (20466543)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 信行 東北大学, 薬学研究科, 教授 (40588456)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | サルコペニア / 認知機能障害 / 尿毒素 / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢の慢性腎臓病(CKD)患者では、サルコペニアや認知機能障害の合併頻度が高い。我々のこれまでの知見から、尿毒素が誘導する細胞内代謝失調による細胞内ATP量の減少が、サルコペニアの発症・進展に関係することが明らかになっている。昨年度までに、adenine誘発CKDモデルマウスへ治療候補薬ニコチンアミドを投与すると、腎機能低下を抑制することを明らかにしている。今年度は、ニコチンアミドの作用機序を明らかにするため、腎細胞内の代謝に着目して解析を行った。その結果、CKDモデルマウスでは腎内代謝が変化しており、特にNAD+が関わる代謝経路で異常が起こっていた。さらに、腎内NAD+量を調べた結果、CKDモデルマウスではNAD+量が通常のマウスと比較して有意に減少していた。これらのことから、CKDマウスでは腎内NAD+量が減少し、TCA回路が停滞するが、ニコチンアミドを投与することで腎内NAD+量が増加し、TCA回路が是正され、CKDの進行が抑制されることが分かった。 さらに我々は、尿毒素が海馬神経細胞株HT-22に与える影響について調べた。9種類(メチルグリオキサール、インドール、3-インドール酢酸、インドキシル硫酸、p-クレシル硫酸、馬尿酸、クレアチニン、メチルグアニジン、グアニジノコハク酸)の尿毒素をHT-22に暴露させ、MTTアッセイで生存率を確認した。その結果、メチルグリオキサール、インドール、3-インドール酢酸、インドキシル硫酸がHT-22に対して毒性を示すことが分かった。さらに、尿毒素を暴露することでGSH量の減少、酸化ストレス応答因子Nrf2の発現上昇、炎症性サイトカインIl6の発現上昇を認めた。これらのことから、尿毒素はHT-22において、酸化ストレス、炎症を誘導することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
adenine誘発CKDモデルマウスを使用し、治療薬候補ニコチンアミドの効果を評価した。その結果、CKDでは腎内NAD+量が減少しているが、ニコチンアミド投与することで、腎内代謝が是正され、CKD進行抑制効果があることが明らかになった。さらに、尿毒素の認知機能障害への影響を調べるため、HT-22へ尿毒素を暴露し、その影響について調べた。ここまでの研究は予定通り進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
尿毒素の認知機能障害への影響について、細胞内代謝に着目して進めていく。さらに、尿毒素の認知機能障害への関与を調べるため、CKDモデルマウスを対象として、行動解析を進めていく。
|