2019 Fiscal Year Research-status Report
妊娠時悪環境による成人後高血圧発症機序の解明と治療可能性の検討
Project/Area Number |
19K08672
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西本 光宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (90646572)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 妊娠時ストレス / 食塩感受性高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠時ストレスによる成人後高血圧発症に対する治療可能性の検討を最終目的とする。DNMT3a作用低下の機序の解明、腎尿細管でのエピジェネティック変化の解明、エピジェネティック修飾薬による治療の検討を目的として研究をすすめた。申請者は先行研究において妊娠時低栄養ストレス(母体糖質コルチコイド(GC)作用の過剰)が血圧中枢特異的に成長後に残存するエピジェネティック変化(DNAメチル化酵素の発現低下とDNAメチル化の低下)をきたし、成長後の高血圧発症を惹起することを示した。本研究は治療応用に向けてエピジェネティック変化の成立機序と高血圧発症に至る分子機構の解明のため、今年度は特に腎尿細管でのエピジェネティック変化の解明を進めた。妊娠時ストレスを模倣するモデルとして妊娠第3期に胎盤通過性の合成糖質コルチコイドであるデキサメサゾンを投与したマウスモデルを用いて解析した。このモデルでは出生時の低体重とともに12週齢から肥満の傾向を認めた。テレメトリ法で測定した血圧ではコントロールマウスと比較して正常食投与下では有意差を認めなかったが、高食塩食を負荷したところ食塩感受性に血圧上昇を認めた。このモデルでは高血圧発症・維持に寄与する腎での食塩再吸収に関与する複数の分子の発現亢進を認めた。一方、妊娠ストレスによる中枢性のエピジェネティック変化を模倣する血圧制御中枢特異的DNAメチル化酵素欠損マウスは同様に出生時低体重、成人後肥満、食塩感受性高血圧を認めたが、必ずしも同様の腎での表現型を認めなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠第3期におけるデキサメサゾン投与により、成人後肥満を伴った食塩感受性高血圧発症モデルが成立することを確認できた。さらにこれまで明らかにしてきた血圧制御中枢のみならず、腎尿細管における食塩再吸収機構への影響が明らかになった。一方詳細な分子メカニズムの解析のため尿細管特異的遺伝子欠損マウスを樹立し、現在実験のための繁殖を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在樹立している妊娠期デキサメサゾン投与モデルだけでなく、妊娠時に低蛋白食を投与する低栄養モデルについても同様の解析をすすめる。エピジェネティック修飾薬による治療の可能性の検討を検討するためにDNAメチル化供与物質である葉酸添加食を投与し、産仔の成長後の血圧中枢遺伝子発現異常の変化、および食塩負荷時の血圧上昇に対する治療効果を検討する。さらに葉酸の投与時期を離乳後にして、出生後の改善の可能性を検討する。また尿細管での食塩再吸収機構の機序を明らかにするため、上流の分子の遺伝子欠損マウスでデキサメサゾンモデルを解析する。
|
Causes of Carryover |
遺伝子欠損マウスの作成について遅れが生じ、次年度以降に支出がずれ込んだため。
|
Research Products
(2 results)