2020 Fiscal Year Research-status Report
急性腎障害におけるリポファジーの役割解明と治療への応用
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19K08677
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 篤史 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (10704786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00379166)
高畠 義嗣 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30403075)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / リソソーム / リポファジー / 近位尿細管 / PPARα / 急性腎障害 / 虚血再灌流 / 脂肪滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
Acute kidney injury(AKI)は腎予後に加え、生命予後を規定することからその病態解明が急務である。AKIでは、脂肪滴蓄積等の脂質代謝異常が存在することが知られている。研究代表者らは、飢餓時の近位尿細管において、蓄積した脂肪滴のオートファジーによる分解、すなわちリポファジーがエネルギー代謝に関わることを報告した。AKIでもリポファジーが起こるという知見を得たことから、その意義を解明することを本研究の目的とした。 本研究の主題であるリポファジーについては、現在までに腎虚血再灌流傷害(IRI)後の近位尿細管で蓄積した脂肪滴がオートファゴソーム様の膜構造物に取り囲まれている像が得られているものの、その役割の解析には至っていない。また飢餓後の腎臓から抽出した脂肪滴分画をLC-3(オートファゴソームの構成要素)抗体で免疫沈降し、質量分析を行った。現在その結果からリポファジーの受容体候補を絞り込んでいるところである。 本研究の研究代表者も参画している基盤研究(C)18K08208では、IRIやシスプラチン腎症などのAKIの際、本来亢進すべきオートファジーが停滞し、その原因がリソソームの機能異常にあることを見出した。AKI後の近位尿細管においては、多数の脂肪滴と拡張したリソソームが同じ細胞に近接して存在することが判明し、脂質代謝異常とオートファジー・リソソーム系の密接な関係が推測された。脂質代謝異常は脂肪酸酸化を中心として多岐にわたっていたが、その中でもPPARαの発現低下に注目した。PPARαアゴニストの投与により脂質異化が促進され、リソソームの機能およびオートファジーフラックスの改善、腎障害の軽減を認めた。さらにAKI後の尿細管細胞のリピドミクス解析から、脂質代謝異常の中でも、過酸化脂質の蓄積が最も重要であることを見出した。過酸化脂質の蓄積はヒト移植後組織でも認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の本来の目的である「AKIにおいてリポファジーは脂質代謝の異常に対抗している」という仮説の検証に関しては、リポファジーが惹起されていることは複数の方法で検証できたが、そのメカニズムや受容体の同定、その精細な役割の解明には至っていない。一方でAKIの病態として脂質代謝異常とリソソーム機能異常の密接な関係が解明できた点は大きな進歩と考える。現在これらをすでにまとめて論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
PPARαアゴニストはリポファジーを誘導するとの報告もあり(PMID 25383539)、本研究で認めた腎保護効果がリポファジー促進によるものか否かについて解明を進めたい。研究途上のリポファジーの受容体候補の同定は引き続き行う。また本研究の過程で、IRI後のオートファジーフラックスが数時間後とは別に1週間後にも活性化されることを見いだした。この意義を探求すべく、薬剤誘導性のオートファジー不全マウスを用いて2峰目のオートファジーのみ不全にした場合の腎障害の程度を調べる予定である。
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Research Products
(1 results)