2020 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎症病態におけるヘパリンコファクターIIの臨床及び分子生物学的意義の解明
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19K08680
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
粟飯原 賢一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任教授 (70372711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 秀介 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任准教授 (00507650)
吉田 守美子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (40510904)
池田 康将 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60432754)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘパリンコファクターII / 糖尿病性腎症 / 尿中アルブミン |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病患者の生命予後とQOLおよび医療経済的な観点から、糖尿病腎症の発症と進展の阻止は重要な臨床課題である。糖尿病性腎症の初期所見として見られるのは、微量アルブミン尿であり、腎症の悪化とともに顕性化し、腎不全に進展する。一方、我々はセリンプロテアーゼ・インヒビターであるヘパリンコファクターII(HCII)にこれまで着目し、HCIIが動脈硬化進展抑制や、糖代謝の恒常性維持に重要であり、これらの病態バイオマーカーとしても有用であることを報告してきた。この様な内因性血管代謝制御因子は同時に腎糸球体保護効果作用を要する可能性があるが、HCIIと腎障害の関連、特に糖尿病腎症における意義についての検討はされていない。そこで、糖尿病腎症発症・進展におけるHCIIの意義について明らかにし、そのバイオマーカーとしての可能性や、治療アプリケーションとしての可能性を探索することを本研究目的とした。 1. 臨床研究 徳島大学病院およびその関連4病院において診療を受けている糖尿病患者310例を対象に、血液化学検査、検尿、尿中アルブミン、eGFRの評価の他に血漿HCII活性の測定を行い、血清クレアチニン、eGFR、アルブミン尿、尿L-FABP等の腎機能評価指標と血漿HCII活性の相関の有無を評価した。また1年後の尿中アルブミンの増減と血漿HCII活性に有意な相関があるか否かを統計学的に検証した。その結果、血漿HCII活性は有意に、尿中アルブミン尿と負の相関を示し、交絡因子の補正にても有意であった。一方で、尿L-FABPとは有意な相関を認めなかった。また血漿HCII活性は、1年後のアルブミン尿の増加とも有意に負の相関を示した。 2. 基礎研究 野生型マウスおよびHCIIヘテロ変異マウスの1型糖尿病モデルを作成し、アルブミン尿の定量と組織学的差異について検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床研究については、概ね終了し、仮説の証明が出来た。結果としては、310名の糖尿病患者を研究対象とし、血漿ヘパリンコファクターII活性と、糖尿病性腎臓病の臨床指標となるアルブミン尿との間に有意な負の相関を見出し、統計学的にも、その効果を証明することが出来た。この臨床研究成果に関しては、科学英文雑誌に投稿し、査読コメントがついた状態で改訂が求められたため、各課題に対する回答加えた版の再投稿を行い、現在審査中である。動物モデルについては、1型糖尿病モデルマウスの作成は成功したものの、人の病態を反映する適切な糖尿性腎症モデルの構築に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
HCII遺伝子改変マウスを用いた1型糖尿病モデルでのアルブミン尿を呈する糖尿病性腎症モデルの作成を引き続き行う。メサンギウム細胞の増殖反応を促進させるため、eNOS欠損マウスとの2重変異作成や、アンジオテンシンII負荷による糸球体障害モデルなどの作成を行い、糖尿病性腎臓病の擬似病態を呈する表現型マウスを確立する。その上で、血漿HCII活性の寡多によって生じる腎病態の差異について、病理学的解析と、分子生物学的解析を進める。
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