2019 Fiscal Year Research-status Report
AKIにおける、CCR7を介したC5a経路制御機構の解明
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19K08701
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 博 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (50831369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 正司 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20303638)
鈴木 康弘 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (20584676)
勝野 敬之 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (60642337)
小杉 智規 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (90584681)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 補体 / T細胞免疫 / C5a / CCR7 / NKT細胞 / 自然免疫 / 獲得免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは補体に注目して、腎疾患の病態生理解明、治療法開発に取り組んできた。補体と凝固系、補体と液性免疫に密接な相互関係が存在することは知られていたが、近年、補体とT細胞免疫にも密接なクロストークがあることが明らかになってきた。本研究課題は、獲得免疫において重要な役割を果たすCCR7に注目して、補体系とT細胞免疫の相互作用の解明を目指している。CCR7は、樹状細胞(DC)とT細胞の会合や、DCの機能調節に役割を有し、T細胞免疫に重要な役割を果たす。一方で、補体H因子の存在がDCのCCR7低下をもたらした報告があり、補体活性化がCCR7発現上昇を来す可能性が示唆されるが、その分子機構や意義は不明である。 申請者は、CCR7欠損(Ccr7-/-)、及び野生型(Ccr7+/+)マウスを用いて、aseptic急性腎障害(AKI)の代表として腎虚血再灌流(IRI)モデル、septic AKIの代表として盲腸結紮穿刺(CLP)モデルの研究を進め、CCR7が、従来報告されてきた獲得免疫だけでなく、自然免疫においても重要な役割を果たしている可能性、CCR7の有無がナチュラルキラーT (NKT)細胞の機能発現に大きな影響を与える可能性を示唆する実験結果を得た。それらの知見から、DAMPs、PAMPsから始まる免疫応答において、TLRsを介するシグナルと、補体C3レセプター(C3R)、C5レセプター(C5R)を介するシグナルが、NKT細胞で統合され、その後のT細胞免疫反応を決定づけるとの仮説を立てるに至った。 今後は、NKT細胞上で、CCL19/21(CCR7のリガンド)-CCR7 axisとC5a-C5aR axisが統合され、その結果NKT細胞から産生されるサイトカインが、ナイーブT細胞の分化、増殖を決定するとの仮説を実証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CCR7欠損、及び野生型マウスを用いて、IRIモデル、CLPモデルを作成し、結果1、結果2を得た。結果1:IRIモデルでは、CCR7欠損マウスにおいて、腎障害が軽い。結果2:CLPモデルでは、CCR7欠損マウスにおいて、腎障害が重篤であり、個体生存率も低い。 CCR7は獲得免疫において重要な役割を果たす分子として有名であるが、IRI、CLPモデル何れにおいても、腎障害の明らかな差が、獲得免疫が作動する前の超急性期に出現した。つまり、CCR7が自然免疫においても重要な役割を果たす可能性が示唆され、NKT細胞はDAMPs、PAMPs刺激に応じて迅速に反応するので、CCR7の有無がNKT細胞の機能発現に影響していると推測された。補体系とNKT細胞はともに、ナイーブT細胞の分化、増殖に関わり、その後の獲得免疫反応を決定づけることが知られているので、NKT細胞から分泌され、ナイーブT細胞分化に関わるサイトカイン、特にインターフェロン-γ(IFNγ)に注目した。 NKT細胞特異的リガンドであるαガラクトシルセラミド(αGalCer)を、CCR7欠損、及び野生型マウスに投与し、結果3を得た。結果3:αGalCer刺激において、CCR7欠損マウスは血清IFN-γ濃度とNKT細胞IFN-γ mRNA発現の両者が、野生型に比して、低値である。 C5a-C5R axisがIFN-γ産生に関わることは既に報告されていたが、CCL19/21-CCR7 axisもNKT細胞のIFNγ産生に関わることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
CCR7とC5aRの一方と両方を刺激した場合のNKT細胞からのサイトカイン産生プロファイル、その結果としてのナイーブT細胞分化に与える影響を、in vivo、in vitroで調べる。また、aseptic AKIの代表としてのIRIモデルとseptic AKIの代表としてのCLPモデルおいて、CCR7欠損が生体にもたらす影響が、当初の予想に反して、正反対となったことから、その分子機構を解明し、AKIの病態生理の解明につなげる。 次に、CCR7とC5aR1のダブルノックアウトマウス(Ccr7-/-C5aR-/-、以下DKO)を作成する。全身放射線照射で骨髄を死滅させたDKOマウスに、野生型(Ccr7+/+C5aR+/+)、CCR7欠損(Ccr7-/-C5aR+/+)、C5aR1欠損(Ccr7+/+C5aR-/-)、DKO(Ccr7-/-C5aR-/-)マウスからそれぞれ骨髄細胞を移植し、骨髄由来細胞のみにC5aR1、CCR7を発現する骨髄キメラマウスを作成する。これらのマウスを用いて、IRIモデルとCLPモデルを解析し、全身のC5aR1とCCR7の中で、白血球系細胞、特にNKT細胞上のC5aR1とCCR7とが重要な役割を果たしていることを示す。 最後に、野生型マウスを用いて、IRIとCLPモデルをそれぞれ作成し、C5a阻害剤、抗CCR7抗体、両者を投与する3群とコントロール群をそれぞれ比較する。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初の予定通りに実験計画を進めていく。
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Research Products
(1 results)