2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病の動脈硬化進展におけるNAD代謝産物の役割
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19K08712
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神田 武志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80317114)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病は末期腎不全のみならず、動脈硬化進展の強力なリスクファクターである。古くから慢性腎臓病において血中のホモシステイン濃度が上昇することが知られ動脈硬化促進の原因のひとつとして考えられてきた。ホモシステインの尿中排泄低下や腎臓での産生亢進が慢性腎臓病における高ホモシステイン血症の原因と想定されているが詳細な機序は不明である(総説 JASN 2001)。ニコチンアミド-N-メチル基転移酵素(NNMT: Nicotinamide N-methyltransferase)はメチオニン代謝とNAD代謝を触媒する酵素であり、NNMTのSNPとホモシステインの濃度が相関し(Trends Endocrinol Metab 2017)、白色脂肪組織のNNMTがホモシステインの濃度に関与することが示唆されているが(Atherosclerosis 2009)、NNMTは肝臓、腎臓において強く発現しておりin vivoにおけるNNMTの関与は未だ明らかではない。NNMTとホモシステインの直接的な関係を検討するため、NNMT過剰発現マウスとNNMT欠損マウスの代謝産物の血中濃度測定を行った。NNMT過剰発現マウスは発育等に問題はなかったが、NNMTの基質であるNAMを投与すると野生型マウスに比し血中ホモシステイン濃度の著明な上昇を認めた。次にNNMT欠損マウスで検討を行った。NNMT欠損マウスでは片腎を行い、腎障害モデルを作成した。野生型マウスでは血中ホモシステインの濃度が4.5±0.3nmol/mlであったのに対してNNMT欠損マウスでは5.0±0.4nmol/mlであった。NNMT欠損マウスではむしろ血中ホモシステインが上昇しており、予想と反する結果であった。NNMT欠損マウスでは他のメチルトランスフェラーゼが代償して血中ホモシステインの増加に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
NNMTの動脈硬化に対する役割を検討するためapoE欠損マウス交配を行っている。 しかしapoE欠損マウスとの交配が遅れている。 またapoE欠損マウスの供給が止まり、マウスの各群の比較が難しくなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
NNMTのホモシステインに対する役割は本研究から否定的となったが、NNMTはNAD代謝調節などに関与するため、引き続き動脈硬化に対する影響を検討する。
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Causes of Carryover |
apoE欠損マウスとの交配を行っていたが、マウスの作出が遅れたため。 また、対照マウスの安定的な供給がストップしたため、マウスの系統作出のため追加で使用する。
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