2019 Fiscal Year Research-status Report
IgA腎症における腎炎惹起性IgA1の糖鎖構造と粘膜免疫異常の解明
Project/Area Number |
19K08733
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
武藤 正浩 順天堂大学, 医学部, 助教 (30790076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 祐介 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70372935)
鈴木 仁 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10468572)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | IgA腎症 / 粘膜免疫異常 / Secretory IgA / 糖鎖異常IgA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
IgA腎症患者の発症、進展に、糖鎖異常IgA1とそれに対する抗体が産生され、糖鎖異常IgA1を含めた免疫複合体が腎糸球体に沈着することが深く関わっていることが複数の既存の報告で確認されている。我々を含め、それら糖鎖異常IgA1は口蓋扁桃をはじめとした粘膜で産生される可能性が報告されてきたが、糖鎖異常IgA1が粘膜由来であることを直接示したデータは非常に少ない。粘膜で分泌されるSecretory IgAは、J chainによりIgAが2量体を形成し、その周囲をSecretory componentが覆うことで、酵素によるIgAの分解を防いでいる他、Secretory componentそのものに細菌の菌体外毒素の無毒化や、病原菌の粘膜への付着を防ぐ役割が報告されている。 我々は以前、糖鎖IgA1に対し特異的な抗体 (KM55)を開発し、IgA腎症の研究で広く使用され始めている。このKM55を用い、本研究において我々はIgA腎症患者の血清から糖鎖IgA1を抽出し、その糖鎖IgA1の少なくとも一部がSecretory IgAであることを確認しており、IgA腎症患者の糖鎖IgA1が粘膜由来である可能性が強く示唆された。また、IgA腎症患者においてIgA腎症の発症、進展に関わる血清中のバイオマーカーの一部が、血清中のSecretory IgAの値と相関していることを確認しており、糖鎖異常IgA1を含めたバイオマーカーの一部とSecretory IgAの関連が示唆された。我々は、上記実験結果の一部を国際学会 (2020年 World Congress of Nephrology (WCN))において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IgA腎症患者の血清中から糖鎖異常IgA1を抽出し、Secretory IgAを検出する実験の条件検討に時間を要した。また、IgA腎症患者の腎生検組織においてSecretory IgAの染色をお試みているが、依然条件検討に難渋している。以上がこれまで進捗がやや遅れている原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討でIgA腎症患者血清中におけるSecretory componentと糖鎖異常IgA1をはじめとした各種バイオマーカーとの関連を検証し一部で相関が確認されているが、今後症例を増やしその詳細を検証していく予定である。現在、IgA腎症患者の腎生検組織においてSecretory IgAの染色の条件検討を行っており、条件が確認でき次第、糖鎖異常IgA1との二重染色を予定している。 また、IgA腎症患者血清中からレクチンを用いてIgAを抽出し、FPLCを用いて多量体IgAと単量体IgAに分け、糖鎖異常IgA1およびSecretory IgAがそのどちらにより分布しているかを検証する。IgA腎症患者に対し口蓋扁桃摘出術およびステロイドパルス療法(扁摘パルス)を行っていく過程で同様の実験を行い、糖鎖異常IgA1およびSecretory IgAの分布がどのように推移していくかも合わせて検証する。 さらに、扁摘パルスの各治療経過で患者血清中のSecretory IgAに加え、骨髄における形質細胞の免疫応答のマーカーである破傷風トキソイドに対するIgAをELISAで測定し、臨床経過との関連を検証する。また、欧米をはじめとした諸外国においては、本邦と異なりIgA腎症の免疫異常の主座として腸管粘膜が注目されている。それと関連して、本邦および欧米のIgA腎症患者の血清中における糖鎖異常IgA1やSecretory IgAを測定し、比較検証も予定している。
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Causes of Carryover |
翌年度以降、複数のIgA腎症患者において血清中から糖鎖IgA1を抽出しSecretory IgAを検出する実験、血清中の糖鎖異常IgA1の測定、レクチンを用いてIgA腎症患者血清中からIgAを抽出後FPLCで多量体および単量体IgAに分離し、糖鎖IgA1の分布をWestern blotで検証する実験などにおいて、糖鎖IgA1に特異的な抗体(KM55)などが少なくとも複数必要になる見込みである。また、糖鎖IgA1を含め、IgA-IgG免疫複合体などの血清中のバイオマーカー測定にELISA用の抗体が複数必要になると思われる。上記実験をはじめ、ELISA、Western blot、免疫染色など行うための実験用試薬および関連物品も必要になる見込みであり、また、国内外の学会において研究成果の発表を積極的に行うことを検討している。
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Research Products
(1 results)