2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of the novel gene modulator PI polyamide targeting protein S as a therapeutic agent for diabetes mellitus and diabetic nephropathy
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19K08737
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
常見 明子 日本大学, 医学部, 研究員 (90646035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 高浩 日本大学, 医学部, 兼任講師 (40386008)
阿部 雅紀 日本大学, 医学部, 教授 (70459890)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | PIポリアミド / プロテインS |
Outline of Annual Research Achievements |
活性型プロテインCの補酵素であり、TAMファミリー受容体で、抗炎症性効果をもつMer受容体のリガンドのプロテインSは、糖尿病の病態および糖尿病性腎症の改善効果を持ち、糖尿病患者で低下していることが報告されている。本研究ではプロテインSの転写活性を選択的に増加させ、そのタンパクを増加させるPIポリアミドの効果について検討する。プロテインSを増加させるPIポリアミドは、負の転写調節をすると知られているAP1とNFκBの結合部位に対して、4種類のデザインを行った。デザインしたPIポリアミドはペプチド合成機PSSM-8を用いて合成し、HPLCで精製を行った。次に、これらの合成したPIポリアミドの結合部位である、マウスプロテインSのプロモーター領域において、FITCで修飾した21bpの2本鎖オリゴDNAを作成した。あらかじめFITC修飾オリゴDNAとPIポリアミドとインキュベーションを行った後に、20%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動を行ったゲルシフトアッセイでは、4種類ともに、PIポリアミドのターゲット配列への結合を確認した。また配列がミスマッチのPIポリアミドについては、ターゲット配列に対して結合は認められなかった。次に、これら4種類のPIポリアミドを用いて、マウス血管内皮細胞(UV♀2)を用いて培養実験を行った。100nMのPMA(Phorbol12-myristate13-acetate)でUV♀2細胞を16時間刺激すると、コントロールに対してプロテインS mRNAの上昇が認められた。この条件下で各PIポリアミドの効果を検討したところ、1種類のPIポリアミドにおいて、10^(-9)MでプロテインSの抑制が認められた。またマウス培養肝細胞であるNCTC1469細胞においても、同じ条件下で実験を行うと、上記のPIポリアミドにおいて、プロテインS mRNAの発現の抑制が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
糖尿病患者において、血清プロテインS値は健常者と比較して低下しており、プロテインSを産生する肝臓や内皮細胞で、プロテインSの発現を増加させ、糖尿病や糖尿病性腎症を改善させる遺伝子発現制御薬PIポリアミドの開発を目指している。初年度は、プロテインSの負の転写調節領域であるAP-1やNFκBの結合領域にPIポリアミドを設計および合成した。次に合成したPIポリアミドがターゲットの遺伝子配列に結合するかを20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるゲルシフトアッセイを行い、ターゲット領域への結合を確認した。これらのPIポリアミドをマウス培養内皮細胞であるUV♀2細胞の培養液に10^(-11)M~0^(-8)Mを添加後、100nMのPMAで刺激すると、このうちの1種類のPIポリアミドが10^(-9)MでプロテインSの発現低下を抑制した。またマウス培養肝細胞であるNCTC1469細胞に対しても同様に発現低下が抑制された。現在、これらの2種類の細胞を高グルコース培地で刺激した際に発現低下するプロテインSに対して、PIポリアミドがプロテインSの発現低下をPMA刺激の際と同様に、抑制するかを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞培養実験において、高糖刺激で発現低下したプロテインSに対する、PIポリアミドの効果をreal time PCRとwestern blotで検討する。また、トランズウエルを使用して、プロテインS産生細胞である培養肝細胞または内皮細胞と培養膵β細胞を共培養を行う。上層のチャンバーに肝細胞、プレート(下層)に膵β細胞を播き、PIポリアミドと共に24~48時間培養する。 その後、培地にストレプトゾトシン(1~5mM程度)を添加して膵β細胞のアポトーシスを 誘導し、PIポリアミドの膵β細胞アポトーシス減少効果をTUNEL染色等で検討する。また、培養内皮細胞を高グルコース下で培養を行い、アポトーシスを誘導し、PIポリアミドの内皮細胞のアポトーシス抑制をTUNEL染色等で検討する。さらに、糖尿病マウスにPIポリアミドを投与し、飼育期間中は、週に1度、体重、食餌量、血糖値を測定し、尿を採取する。またグルコース負荷試験やインスリン負荷試験を行う。飼育終了後は、麻酔下で血液を採血して安楽死とし、肝臓、膵臓、骨格筋、脂肪組織を採取して、血糖値やインスリン、プロテインS、プロテインC等を測定する。また膵臓組織の標本を作り、グルカゴンとインスリンの免疫染色を行う。さらにTUNEL法にて膵β細胞のアポトーシスについても検討し、糖尿病マウスに対するプロテインSを増やすPIポリアミドの効果について検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)初年度において、実験に必要であった培養膵β細胞の購入ができなかった。それに伴い、膵β細胞の培養実験が行えなかったので、当初に予定した研究費を使用できなかった。 (使用計画)初年度に購入出来なかった細胞は、購入の目処がついたので、繰り越した研究費は細胞の購入費用として使用する。また次年度は、細胞培養実験に必要な培地や培養に関わる消耗品、(フラスコやトランズウエル等)、動物実験については、糖尿病マウスの購入や飼育にかかる経費や消耗品、採取した血液や摘出した臓器等における遺伝子発現やタンパク質の発現の解析に必要な試薬類(プライマー、マスターミックス、抗体、ELISA キット等)を購入する。
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