2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K08750
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 暁生 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (70714088)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | そう痒 / OSMR / 限局性皮膚アミロイドーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、OSM(オンコスタチンM)やIL(インターロイキン)-31の受容体を構成するOSMRβ(オンコスタチンM受容体β)が関与するそう痒の機序を明らかにすることを目的としている。OSMRβをコードするOSMR遺伝子は、皮膚のそう痒を主症状とする家族性限局性皮膚アミロイドーシス(FPLCA)の原因遺伝子であり、その変異によって起こるOSMRβの機能異常が、皮膚のそう痒に関与していると考えられている。本研究では、OSMRβ異常によって引き起こされる表皮角化細胞と後根神経節の細胞内シグナル伝達の異常を解析し、それによって引き起こされるそう痒の機序を明らかにする。その結果、IL-31が関与するそう痒発生機序の解明の第一歩となるのみならず、そう痒に対する治療標的がより明確になり、効果的で副作用の少ない新薬の開発につながることが期待できる。令和元年度から令和2年度の2年間では、下記の2つのサブテーマを設定し、OSMRβの関与するそう痒の機序を明らかにすることを試みている。 1. ヒト表皮角化細胞株における変異OSMRβの機能解析 OSMR変異の細胞機能への影響を検討する上で、OSMRβ以外の背景を同じにするためにヒト表皮角化細胞株にOSMR変異を導入し、OSMとIL-31刺激の下流シグナルについて解析する。すでに変異OSMRβを遺伝子導入するためのプラスミドは作成しており、現在、ヒト表皮角化細胞株に遺伝子導入し、変異OSMRβの発現を確認中である。 2. マウスDRG細胞株におけるIL-31, OSM刺激による細胞機能の解析 現在、マウスDRG細胞株(MED17.11)をOSM、IL-31で刺激して、細胞内へのCaの流入とOSMRβの下流のシグナルについて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、下記の2つのサブテーマを設定し、表皮角化細胞とDRG細胞のそれぞれにおけるOSMRβ役割とそう痒への関与を明らかにすることを試みた。おおむね計画通りに研究は進んでいる。 1. 変異OSMRβを発現したヒト表皮角化細胞株の作成 昨年度はFPLCA患者2家系(OSMR-p.G618A、p.P694L)と同一のOSMR遺伝子変異をもつ2種類のプラスミドベクターを作成し、HaCaT細胞にそれぞれのプラスミドベクターの遺伝子導入を試みた。現在は、遺伝子導入後のHaCat細胞を用いて、OSMRβの発現量の増加に対してはリアルタイムPCRとフローサイトメトリーで、変異OSMRβの発現に対してはRNAの遺伝子配列を評価することによって確認を行っている。 2. マウスDRG細胞株におけるIL-31, OSM刺激による細胞機能の解析 昨年度はMED17.11をOSMやIL-31で刺激し、OSMRβの下流のシグナルのリン酸化STAT3, STAT1, STAT5, Erk1/2, Aktなどのリン酸化をWestern blot法にて確認した。OSMではいずれの分枝のリン酸化も確認したが、IL31刺激では一部の分枝のリン酸化しか確認できず、このOSMとIL31の下流シグナルの差がそう痒の機序につながっている可能性が示唆された。現在は、OSMやIL31刺激によるDRG細胞内へのカルシウム流入をCa2+ 蛍光プローブを用いて観察するための条件を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ヒト表皮角化細胞株における変異OSMRβの機能解析:計画通りに進行しており、現在、遺伝子導入後のHaCat細胞に変異OSMRβの発現していることを確認中である。今年度は変異OSMRβを発現したHaCat細胞をOSMやIL31で刺激し、変異レセプターによる下流シグナルや炎症系サイトカインの発現の異常について解析を行う。 2. マウスDRG細胞株におけるIL-31, OSM刺激による細胞機能の解析:計画通りに進行しており、現在は、OSMやIL31刺激によるDRG細胞内へのカルシウム流入をCa2+ 蛍光プローブを用いて観察するための条件を検討中である。今年度はさらに、OSMやIL31刺激によるDRG細胞の形態的及び機能的な変化について解析を行う。形態的な変化については神経突起の伸長や神経突起の分枝について解析を行う。機能解析は、それぞれのサイトカイン刺激後の細胞からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行う。
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