2019 Fiscal Year Research-status Report
3次元・動物モデルを用いた単純疱疹の小水疱形成時におけるデスモグレインの役割解析
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19K08761
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
山本 剛伸 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50379799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 宏明 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60388965) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HSV / ケラチン / デスモグレイン / C57BL/6Jマウス / 小水疱 / zosteriform / 重層扁平上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
in vitroでの解析において、単純ヘルペスウイルス(HSV)が培養ケラチノサイトに感染することにより惹起される細胞内骨格蛋白(tubulin/actin/keratin)、細胞間接着蛋白(デスモグレイン3/E-カドヘリン)の発現変化を様々なカルシウム濃度(低Ca2+/高Ca2+)培地の条件で比較、検討した。細胞内骨格、細胞間接着蛋白量について、HSV-1感染前後、培地のカルシウム濃度に関わらず、変化がみられなかった。発現分布の解析では、低Ca2+の条件において、感染前は細胞質に細線維状の分布をしていたtubulin/actin/keratinが、感染後は、核周囲に層状分布を示した。高Ca2+では、tubulin/actinは顆粒状、keratinは流線形に分布が変化した。デスモグレイン3/E-カドヘリンの発現分布は、カルシウム濃度に関わらず、点状から粗大顆粒状に分布が変化した。これらの発現分布変化により棘融解、多核巨細胞の誘導につながることが想定された。 動物モデルを用いた単純疱疹の小水疱形成時におけるデスモグレインの役割解析を行うに際し、初年度はマウスを用いたHSV-1感染による皮疹形成モデルを確立した。C57BL/6Jマウスの大腿にHSV-1を経皮感染させると、接種部位にびらん、潰瘍の皮膚病変を形成したが小水疱は認めなかった。一方、接種部位の皮膚病変と離れた同側のマウス足底に皮疹を誘導することができた。さらに足底部位にHSV-1の存在が確認され、ウイルスが神経線維を介して伝播し、足底の皮疹形成に関与していることが示唆された。小水疱形成はヒトの表皮と同様に、ある程度の重層扁平上皮構造が必要であることが想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4年間に、in vitroとin vivoによる解析を平行して行い、様々な条件で検討を行い、2次元と3次元でのデータの相同性を確認する。さらに動物モデルを用いて、デスモグレインが及ぼすHSV感染の影響を解明する予定である。 初年度において、in vitro、in vivoの基礎的解析を行うことができている。今後、3年間でin vitroによる解析として、3次元培養皮膚モデルを用いて、重層培養したケラチノサイトに角層側または基底細胞側からHSV-1を感染させ、経時的にケラチノサイトの形態を確認する(棘融解細胞、多核巨細胞の確認)。In vivoによる解析として、C57BL/6Jマウスを用いたモデル(Wild Type, Dsg3ノックアウトマウス)を用いて同様の研究を行っていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroによる解析として、3次元培養皮膚モデルを用いて、重層培養したケラチノサイトに角層側または基底細胞側からHSV-1を感染させ、経時的にケラチノサイトの形態を確認する(棘融解細胞、多核巨細胞の確認)。ケラチノサイトの形態について、新規確立した実験系(Cell Tracker Dyeシステム)を用いた免疫染色による感染細胞の確認のほか、電子顕微鏡で細胞膜融合の有無、表皮細胞間接着分子発現の確認を行う。Cell Tracker Dyeシステムを利用して、フローサイトメトリーによるHSV感染細胞/非感染細胞の区別、経時的に多核巨細胞形成の解析を細胞のサイズ・染色性より確認する。細胞融合(cell-to-cell fusion)について、感染時の膜融合に重要な役割をもつHSV糖蛋白の一種であるgBの発現について解析する。HSV-1侵入経路の確認:HSV-1の感染効率について、角層側、基底細胞側感染で比較する。 動物モデルを用いた解析として、デスモグレイン3欠損マウス、Wild typeマウスを用いて、HSV-1を接種させ、マウス足底に形成される皮疹のサイズを経時的に測定、病理組織学的に確認する(HE染色、免疫染色でHSV-1感染細胞の分布を確認する)。病変部周囲に浸潤してくる細胞の種類、数を免疫染色、フローサイトメトリーで解析し、皮疹のサイズと関連性について確認する。ウイルス複製能を評価するために、採取した皮膚組織よりウイルス粒子を抽出し、plaque assayにより測定する。 以上のようにin vitroとin vivoによる解析を平行して行い、デスモグレインが及ぼすHSV感染の影響を解明する予定である。
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Causes of Carryover |
デスモグレイン3 ノックアウトマウスの納入手続きが遅れたため、予定していたDsg3ノックアウトマウスを用いたDsg3が及ぼすHSV感染の影響を解明する研究が出来ず、次年度使用額が生じた。
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