2020 Fiscal Year Research-status Report
3次元・動物モデルを用いた単純疱疹の小水疱形成時におけるデスモグレインの役割解析
Project/Area Number |
19K08761
|
Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
山本 剛伸 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50379799)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 宏明 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60388965) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 単純ヘルペスウイルス / C57BL/6Jマウス / 小水疱 / 重層扁平上皮 / 脊髄後根神経節 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの場合、HSV-1感染により皮膚に小水疱を形成するが、C57BL/6JマウスにHSV-1を経皮感染させると、接種部位に小水疱を認めず、びらん、潰瘍を形成する。この原因として小水疱の形成はヒトの表皮と同様に、ある程度の重層扁平上皮構造が必要であると仮定し、解析を進めた。 マウスの足底は重層扁平上皮で構成されており、ヒトの皮膚と同様に汗腺が存在する。つまり、マウスの足底の皮膚はヒトの皮膚と構造が似ているため、マウス足底にHSV-1感染により小水疱を形成するモデルの作成を行った。その結果、マウスの大腿にHSV-1を経皮感染させると、接種部位の皮膚病変と離れた同側の足底に丘疹、小水疱の形成を誘導することができた。さらに足底部皮膚にHSV-1が存在することを様々な方法で確認した。また、大腿部経皮感染部位に潰瘍形成などの皮膚症状を強く認めた例ほど、足底のHSV-1ウイルス量が多い傾向がみられた。効率的に足底に皮疹を誘導するために、接種する部位の検討を行ったところ、活動性が低下する例や死亡例が多く、足底の皮膚症状が誘導できた例が少数であった条件や、全例で足底に皮疹を誘導することが可能であった条件もあり、接種する部位により大きく症状が異なることが判明した。大腿後面に経皮接種したマウスの脊髄後根神経節を採取したところ、同側の脊髄後根神経節にもHSV-1の存在が確認された。一方、経皮接種部位と反対側の脊髄後根神経節にはHSV-1はほとんど検出されなかった。 つまり、ウイルスが神経線維を介して順行性輸送により伝播し、足底の小水疱形成に関与していることが考えられた。一方、HSV-1は神経線維を介して逆行性輸送により細胞体方向へ運ばれ、脊髄後根神経節へ運ばれる。これによりHSV-1の潜伏感染を誘導できる可能性があることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4年間に、in vitroとin vivoによる解析を並行して行い、様々な条件による検討で、2次元と3次元でのデータの相同性を確認する。さらに動物モデルを用いて、デスモグレイン(Dsg)が及ぼすHSV感染の影響を解明する予定である。 in vitro、in vivoの基礎的解析はすでに終了しており、in vitroにおいてケラチノサイトの培養条件の違いによってHSV-1感染により多核巨細胞の誘導、棘融解細胞を形成することを確認している。一方、in vivoによる解析として、C57BL/6Jマウスを用いて、足底に小水疱を誘導できるシステムの構築に成功した。今後はDsg3ノックアウトマウスなどを用いて、このシステムを応用し、最終的な目標である単純疱疹の小水疱形成時におけるDsgの役割を解明していく方針である。
|
Strategy for Future Research Activity |
C57BL/6Jマウスを用いて、足底に小水疱を誘導できるシステムを応用し、具体的に小水疱を形成するメカニズムの解明に取り組む。 デスモグレイン3(Dsg3)ノックアウトマウス:in vitroにおける研究結果より、Dsgが多核巨細胞形成に何らかの役割を果たしていることが示唆されている。このため、Dsg3ノックアウトマウスを用いて、HSV-1を投与し、皮疹誘導の状態を確認する。 Flaky tailマウス(フィラグリン欠損マウス):アトピー性皮膚炎ではカポジ水痘様発疹症のようなHSV感染症を併発しやすい。Flaky tailマウスはアトピー性皮膚炎のモデルマウスとして一般に利用されており、このマウスにHSV-1を投与し、足底の皮疹確認、ウイルス増殖の確認を行う。 PILRαノックアウトマウス:HSV-1の感染には、PILRαとHSV-1 gBの相互作用とHVEMやNectinとHSV-1 gDの相互作用の両方が必要である。このPILRαを欠損させたPILRαノックアウトマウスにHSV-1を投与し、足底の皮疹確認、ウイルス増殖の確認を行う。 これらの解析結果を総合的に判断し、最終的にHSV-1の皮膚感染により、小水疱形成をきたす機序の解明に取り組む予定である。
|
Causes of Carryover |
使用したマウスの数が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。 次年度はノックアウトマウスの使用など解析項目が多くなる予定であるため、試薬購入に充当する。
|