2019 Fiscal Year Research-status Report
毛包幹細胞へのlineage primingに寄与する遺伝子ネットワークの同定
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19K08763
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森田 梨津子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (20700040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 毛包幹細胞 / 1細胞ライブイメージング / 1細胞トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
毛包の高い再生能を支える毛包表皮幹細胞が、胎仔期に正しい場所、正しい時に誘導される機構については、いまだ十分に理解されていない。私たちはこれまでに、1細胞解像度のライブイメージングと1細胞トランスクリプトーム解析を駆使して、初期毛包の発生を解析し、細胞の発生系譜と各系譜の遺伝子発現の変化を網羅的に同定した。そこで本研究では、幹細胞誘導過程で働く遺伝子群から、幹細胞へのlineage primingに寄与するコアな遺伝子ネットワークとこれを駆動するマスター制御因子を明らかにし、胎生期に一見均質な細胞から幹細胞と多くの機能細胞が生み出され秩序が形成されるまでの仕組みを理解することを目指した。私達はこれまでに、将来幹細胞になる細胞は発生初期の毛包プラコード辺縁の基底細胞層から誘導されること、毛包プラコードには異なる遺伝子発現パターンを有する上皮細胞系譜が同心円上に配置し、このプラコード上の二次元同心円パターンが間葉側へ突出するように陥入、かつ各領域が長軸方向に伸長することで、三次元的な筒状の毛包構造を作るという、新たな毛包発生のモデル -テレスコープモデル-を見出している。さらに、毛包プラコードの二次元同心円パターンと将来の幹細胞を生み出す制御因子の同定を目指して、1細胞RNA-seqデータを掘り下げて解析した結果、幹細胞の前駆的な細胞はWnt low/Bmp highの領域から生まれることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、毛包幹細胞へのlineage primingに寄与する内因性の制御因子の同定を目指し、1細胞トランスクリプトーム解析から、幹細胞の誘導に寄与すると期待されるシグナルパスウェイを見出した。さらに、表皮前駆細胞と相互作用して幹細胞誘導と恒常的な維持に寄与する周囲環境(外的要因)を明らかにするため、毛包表皮細胞に隣接した毛包間充織細胞の動態解析にも着手しており、概ね当初の研究計画通りに進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
幹細胞の誘導過程で動くシグナルネットワークを、siRNAによるノックダウン、薬理学的阻害剤や活性化剤の添加、レーザーアブレーションによるシグナルソースとなる細胞の除去等を行うことで摂動し、毛包上皮幹細胞の誘導に強く寄与する分子を同定することを目指す。また本研究成果を学術論文として発表する。
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Causes of Carryover |
本年度は、成果発表のための旅費を別の経費から支出することになったため、当初の予定よりも使用額が下回った。本予算は来年度に予定している、生化学的な解析や動物の作製費で使用する予定である。
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