2019 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉移行阻害薬は全身性強皮症の新規治療薬となりうるか
Project/Area Number |
19K08769
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
長谷川 稔 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (50283130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 線維化 / 治療 / 強皮症 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性強皮症は、皮膚に線維化をきたす膠原病で、その治療法は確立されていない。このため、本疾患の皮膚硬化に対する治療の開発は喫緊の課題である。我々は、全身性強皮症の線維化の機序のひとつとして、上皮間葉転換や内皮間葉転換の促進が関与しているのではないかと考えてきた。このため、間葉転換を阻害する治療が、皮膚の線維化治療薬として有用な可能性を検証することとした。1200種類以上の化合物から、培養ヒト皮膚線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を抑制する薬剤をいくつかスクリーニングした。そのひとつとして、我々の共同研究者らが開発した化合物であるLG283に着目し、全身性強皮症の治療薬につながりうるかどうか、検討を開始した。まずは、in vitroでLG283の作用を検討したところ、培養ヒト正常皮膚線維芽細胞にTGF-betaを添加した際のコラーゲンやファイブロネクチンなどの細胞外基質蛋白の産生を抑制することが明らかとなった。また、これらの培養線維芽細胞において、TGF-beta添加後のSmad2/3のリン酸化や核内移行を抑制することがわかった。そこで、全身性強皮症のマウスモデルにおいて、LG283の有用性を検討することとした。ブレオマイシンを連日28日間背部の皮下に注射して誘導する皮膚線維化モデルにおいて、LG283を連日経口投与すると用量依存性に皮膚の肥厚が軽減し、コラーゲンの含有量が低下して線維化が有意に抑制された。また、線維化の過程でみられる炎症細胞浸潤の程度も、LG283を投与していた群では有意に減少していた。安全性の面では、LG283の投与による明らかな副作用は認められなかった。今後、その線維化抑制機序について、詳細に検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化合物LG283が皮膚の抗線維化薬として有用な可能性がvitroとvivoで証明され、マウスにおいて副作用も認められなかったことから、LG283は全身性強皮症の治療薬の候補になりうるものと考えられた。新規のpositiveな発見が認められたことから、おおむね順調に進んでいるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、LG283が皮膚の線維化を抑制する機序に関して、上皮間葉転換や内皮間葉転換を抑制することによるのではないかという観点から、培養皮膚線維芽細胞やブレオマイシン誘導性皮膚線維化モデルを用いて詳細に検討していく。
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