2019 Fiscal Year Research-status Report
自己毛包幹細胞由来幹細胞含有バイオマテリアルを用いた脊髄損傷部と心不全の再生医療
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19K08781
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
天羽 康之 北里大学, 医学部, 教授 (10306540)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 再生医療 / 脊髄損傷 / 心筋再生 / 毛包幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス由来毛包幹細胞による脊髄損傷再生モデルと同様の手法を用いて、ラット由来毛包幹細胞のコロニーを大量培養し、毛包を採取したラットの脊髄損傷部に移植し、再生を誘導した。脊髄損傷ラットモデルは、まず脊椎の背部を開放して、重りで金属棒による脊髄の圧迫損傷を行い、脊髄損傷部を作製する。脊髄損傷部の作成後、polyvinylidene fluoride membraneへ毛包幹細胞を組み込んだ後に移植し、再生を誘導した。脊髄損傷再生部の神経細胞やグリア細胞、心筋細胞への分化の確認は凍結切片を用いた免疫組織染色法を行い、移植した毛包幹細胞による再生能を確認した。現時点で脊髄損傷部に毛包幹細胞移植したラットで下肢の運動機能の改善が認められた。 マウス心筋細胞への分化能を応用した研究では、イソプロテレノールの添加が心筋細胞への分化を促進する因子であることを明らかにした。さらにイソプロテレノールに加え、アクチビンA、BMP4 (bone morphogenetic protein 4)、塩基性線維芽細胞増殖因子を添加し培養することにより、心筋細胞への分化が誘導され、拍動する心筋細胞のシートが形成された。同様の手法を用いてラットの髭毛包から分離した心筋シートの作成に成功した。現在、心機能低下ラットへの移植の準備を行っている。移植部の遺伝子異常の発現や移植後の組織学的な検討により腫瘍化の有無を調査を並行して行っている。次年度はヒト由来毛包から分化した心筋細胞を用いた心筋シートの作成と心機能低下マウスへの心筋シート移植を検討しており、低酸素状態をはじめとする毛包から心筋細胞を最も効率よく心筋を増殖できる培養条件を確認し、毛包から分離した心筋細胞を用いた心筋シートを作成する。過去の報告から細胞シートはpoly N-isopropylacrylamide等が塗布された培養皿を用いて作製することを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの研究で、毛包幹細胞を用いた再生医療は早期の臨床応用が期待でき、ラットの毛包幹細胞による脊髄損傷の再生や毛包幹細胞から分化した心筋細胞は心臓再生医療に高い有効性を持つことが示唆された。心臓疾患は世界でも死因の上位に挙げられる。大量に心筋細胞を欠落すると心機能は著しく低下するが、心筋細胞にはほとんど増殖能がなく自己回復は臨めない。そのため、重度の心臓疾患に対しては心臓移植が最も有効的な治療法であると言われている。一方で、深刻なドナー不足であるため、近年ES細胞やiPS細胞などの幹細胞を用いた再生治療に期待が高まっている。 今回、作成に成功したラット毛包幹細胞由来の心筋シートを、今後の研究では心機能低下ラットへ移植し、毛包幹細胞から分化した心筋細胞のラット心臓への生着を確かめる。毛包幹細胞は遺伝子操作などを用いずに単純な方法で分化培養が可能である。さらに、患者本人の皮膚毛包から採取した毛包幹細胞を患部へ移植すれば、移植後の拒絶反応の問題を考慮する必要はなく、ES細胞やiPS細胞などが抱える腫瘍化へのリスクは低いため、高い安全性が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次のステージでは、マウスよりも脊髄の部分損傷度の細かな処置が可能なラットにおける脊髄損傷モデルへの毛包幹細胞移植による脊髄再生や、心筋への移植も可能なラットの心機能低下モデルでの毛包幹細胞由来心筋シートによる再生能の検討を詳細に行う。それに並行して、ヒトの頭部毛包から分離した毛包幹細胞からのドパミン産生細胞の誘導と、ヒト由来毛包幹細胞をpolyvinylidene fluoride membraneへ組み込んだ後にSCIDマウスへ移植し、ヒト由来毛包幹細胞から分化した心筋細胞のマウス心臓への生着を確かめることを予定している。再生能の評価に加えて、遺伝子異常の発現や移植後の組織学的な検討により腫瘍化の有無を調査し、臨床応用に向け安全性を確認する。
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Causes of Carryover |
物品費等の購入を行った後に残った残額が2326円と小さく、使い切れなかったためです。次年度に使用を検討しております。
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