2020 Fiscal Year Research-status Report
自己毛包幹細胞由来幹細胞含有バイオマテリアルを用いた脊髄損傷部と心不全の再生医療
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19K08781
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
天羽 康之 北里大学, 医学部, 教授 (10306540)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 毛包 / 再生医療 / 脊髄損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、より臨床に近い、亜急性期のモデルとしてマウスの脊髄損傷の21日後に損傷部を除去し、同部に毛包幹細胞を移植するマウスモデルを作成し、損傷の改善効果を確認した(Obara K, Amoh Y et al. Hair-follicle-associated pluripotent (HAP) stem cells promote functional recovery from spinal cord injury in early chronic phase. 論文投稿中)。さらに、我々はマウス毛包幹細胞をneural-induction medium (STEMdiff Dopaminergic Neuron Differentiation Kit) で培養することにより、毛包幹細胞からtyrosine hydroxylase陽性のドパミン産生細胞が分化することを確認した (Yamane M, Amoh Y et al. Hair-follicle-associated pluripotent (HAP) stem cells can extensively differentiate to dopaminergic neurons. Cells; in press)。現在、パーキンソン病モデルマウスへのマウス毛包幹細胞由来ドパミン産生細胞の移植によるパーキンソン病の改善効果の確認と、ラットとヒト毛包幹細胞からのドパミン産生細胞の分離を行っている。また、ラットからの心筋誘導研究も順調に進んでいて、iPS等の他の幹細胞とは比較にならないほどのしっかりした心筋線維構築を持つ心筋シートを作成することに成功した(Takaoka N, Amoh Y et al. Long myocardial fibers induced by rat hair-follicle associated pluripotent (HAP) stem cells. 論文投稿中)。現在、前記の動物モデルの移植実験に加えて、人の毛包からの心筋線維の作製、ドパミン産生細胞の誘導を行っている。作成が成功すれば免疫不全動物への移植に移行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの研究で、毛包幹細胞を用いた再生医療は早期の臨床応用が期待でき、ラットの毛包幹細胞による脊髄損傷の再生や毛包幹細胞から分化した心筋細胞は 心臓再生医療に高い有効性を持つことが示唆された。心臓疾患は世界でも死因の上位に挙げられる。大量に心筋細胞を欠落すると心機能は著しく低下するが、心 筋細胞にはほとんど増殖能がなく自己回復は臨めない。そのため、重度の心臓疾患に対しては心臓移植が最も有効的な治療法であると言われている。一方で、深 刻なドナー不足であるため、近年ES細胞やiPS細胞などの幹細胞を用いた再生治療に期待が高まっている。 今回、作成に成功したラット毛包幹細胞由来の心筋シートを、今後の研究では心機能低下ラットへ移植し、毛包幹細胞から分化した心筋細胞のラット心臓への 生着を確かめる。毛包幹細胞は遺伝子操作などを用いずに単純な方法で分化培養が可能である。さらに、患者本人の皮膚毛包から採取した毛包幹細胞を患部へ移 植すれば、移植後の拒絶反応の問題を考慮する必要はなく、ES細胞やiPS細胞などが抱える腫瘍化へのリスクは低いため、高い安全性が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、前記の動物モデルの移植実験、安全性の確認に加えて、人の毛包からの心筋線維の作製、ドパミン産生細胞の誘導を行っている。同時に生細胞の心筋線維を染色して拍動する心筋細胞の撮影とドパミン関連の免疫染色を追加で行っている。人の毛包からの心筋線維の作製、ドパミン産生細胞の作成が成功すれば免疫不全動物への移植に移行する予定である。
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Causes of Carryover |
物品費等の購入を行った後に残った残額が小さく、使い切れなかったためです。次年度に使用を検討しております。
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