2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of molecular mechanism of granuloma formation by autoinflammation
Project/Area Number |
19K08784
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
神戸 直智 関西医科大学, 医学部, 准教授 (50335254)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自然免疫 / プロテオミクス / リン酸化蛋白 / iPS細胞 / 肉芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床の場での患者との出会いを契機として,NOD2遺伝子の変異により自己炎症的機序により肉芽腫をきたすブラウ症候群の解析に従事し,その病態解明と病態に基づいた治療薬の開発を目指して取り組んできた。この中で京都大学iPS研究所との共同研究として患者由来iPS細胞を樹立し,遺伝子の強制発現系を用いない細胞モデルとして初めて,変異NOD2をもつ細胞がNF-κBの転写亢進やサイトカインの産生亢進を示す系を確立することができた。しかしその中で,変異NOD2を発現する単球が,リガンドであるMDPが存在しない状態では機能獲得型としての表現系を呈するのに対して,MDPに対してはむしろ低反応性を示すという奇異な現象を見出し,その機序の解明を試みてきた。本年度はMDP以外で単球を活性化し得る物資に対する反応性を変異の有無による差異に着目して検証することで,活性化物質毎にそれが変異NOD2が炎症の制御に直接関わっていると想定される経路,間接的に関わる経路,NOD2に関わらない経路のいずれに関与するかを検証した。 また,平行してMDPに対してはむしろ低反応性を示すという現象がなぜ引き起こされるかを検証するため,変異の有無,MDP刺激の有無について条件分けを行い,リン酸化プロテオミクス解析を実施した結果,炎症の制御に関わっていると考えられるある蛋白のリン酸化が,変異NOD2をもった細胞に特異的にリン酸化されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者由来iPS細胞から分化誘導し,ブラウ症候群患者で同定された変異NOD2を発現する単球を用いた検証から,リガンドであるMDPが存在しない状態では機能獲得型としての表現系を呈するのに対して,MDPに対してはむしろ低反応性を示すという奇異な現象を見出し,その機序の解明を試みてきた。 本年度はNOD2のリガンドであるMDP以外で,患者で同定されたNOD2変異が疾患関連性のあるものであることを示す際に用いているNF-κBの転写亢進能に着目して,NF-κB経路に関わるNOD2以外の単球を活性化し得る物質(たとえば,TLRのリガンドであるLPSやサイトカインのTNFα)に対する反応性を,NOD2変異の有無による差異に着目して検証し,活性化物質毎にそれが変異NOD2が炎症の制御に直接関わっていると想定される経路,間接的に関わる経路,NOD2に関わらない経路のいずれに関与するかを検証した。 また,平行してiPS細胞から分化誘導した単球を,NOD2変異の有無,MDP刺激の有無について条件分けを行い,リン酸化プロテオミクス解析を実施した。その結果,炎症の制御に関わっていると考えられるある蛋白のリン酸化が,変異NOD2をもった細胞に特異的にリン酸化されることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
単球のNF-κB経路を活性化する物質毎にそれが変異NOD2が炎症の制御に直接関わっているのか,間接的に関わるのか,あるいはNOD2の変異の有無に関わらず同じ反応を誘導するかにグループ分けした解析結果に基づき,そのシグナル伝達経路に着目して,それぞれの経路の共通点,差異を明らかにすることで,より直接的にNOD2変位が関わる経路を同定することで,ブラウ症候群が肉芽腫を形成するという病態解明を目指す。 また,リン酸化プロテオミクス解析によって同定された,変異NOD2をもった細胞に特異的にリン酸化されるタンパク質に関しては,その機能解析を進める。幸いにもリン酸化されたタンパク質に対する抗体が既に市販されており,この抗体を用いてwestern blotting法にて,リン酸化プロテオミクス解析の結果の制限を試みているが,残念ながら感度の問題か再現性の確認には至っていない。この技術的な問題を克服するため,リン酸化プロテオミクス解析を依頼したかずさDNA研究所の小原先生を通じて,医薬基盤研・創薬標的プロテオミクスプロジェクトの足立先生を紹介していただき,解析の助言を得て進める環境を整えた。
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Causes of Carryover |
研究は当初の計画どおり実験を実施することができ,また初年度に予定した成果を確実にあげることができていたが,2020年4月より所属先が京都大学へと移動する事になったことから,次年度に所属先が変更になっても予定通り研究が進められるように,年度を跨っての研究に関しては,一先ず先送りとしたために,次年度使用額が生じた。 4月に所属先が変更になってからは,コロナ禍によって当初は研究環境に立ち上げができずにいたが,状況の改善に伴って,徐々に研究環境を整え,現在は研究が予定通り実施できる環境を整えて実験が行えている。
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