2020 Fiscal Year Research-status Report
Lipid mediators in the pathogenesis of atopic dermatitis
Project/Area Number |
19K08790
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
本田 哲也 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40452338)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 脂質メディエーター / プロスタグランジン |
Outline of Annual Research Achievements |
プロスタグランシジンを代表とする脂質メディエーターは、生体恒常性維持、炎症・免疫病態制御など生体に極めて重要な役割を果たす生理活性脂質であり、その制御は様々な疾患治療へ臨床応用されている。代表的な慢性炎症性皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎においても、脂質メディエーターの病態形成への関与が示唆されてきたがその詳細なメカニズムは未だ不明な点が多い。本研究では、脂質メディエーターの中でもプロスタグランシジンに着目し、そのアトピー病態への関与・制御機構を解明することを目的としている。まず、ハプテン反復塗布によるアトピー性皮膚炎モデルをもちいて、プロスタグランジン合成阻害剤であるインドメタシンの効果を検証した。その結果、インドメタシン投与群では皮膚の浮腫などの臨床所見、組織学的な炎症細胞浸潤・皮膚肥厚の程度、type2サイトカイン産生量ともいずれも有意に増悪・増強された。また、血中のIgE量についても、インドメタシン投与群で有意に増強していた。すなわち、内在性に産生されるプロスタグランジンは、アトピー性皮膚炎の炎症局所において、炎症抑制性に作用している可能性が示唆された。炎症部位では種々のプロスタグランジンが産生増強していたが、特にプロスタグランジンE2の増強が強く認められた。インドメタシン投与群では、type2サイトカインのうち、もっとも上流に位置するIL-33, TSLPの産生増強が認められいたため、プロスタグランジンE2がそれらのサイトカイン産生制御を行なっている可能性が示唆された。さらにプロスタグランジンE2の作用する受容体を培養表皮角化細胞を用いて検討したところ、EP2受容体を介し、細胞表面上のPAR-2受容体の内在化を誘導し、TSLPの産生制御を行っていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
プロスタグランジンが、アトピー性皮膚炎病態に制御的に作用していることを見いだすことに成功した。また、その候補としてプロスタグランジンE2を同定し、またその作用メカニズムとして皮膚局所からのtype2サイトカイン産生制御である可能性を示した。さらに、プロスタグランジンE2の作用する受容体の同定とその作用因子がPAR-2を介したTSLP産生制御であることを突き止めた。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞で見出された知見が、個体レベルでも作用が認められるかどうか、またヒト皮膚組織でも認められるかについて、薬理実験、免疫組織学的評価などにて詳細に検討を行う。
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Causes of Carryover |
実験が順調にすすみ、当初の予定より少ない動物、試薬で研究が遂行できた。次年度はその余剰金を生かし、プロスタグランジンE2がケラチノサイト機能に与える影響について動物実験をさらに行う。
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