2019 Fiscal Year Research-status Report
新規治療の確立を目的とした全身性強皮症の血管病変モデルの作製
Project/Area Number |
19K08796
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
後藤 瑞生 大分大学, 医学部, 講師 (70433050)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 豊 大分大学, 医学部, 教授 (80336263)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 全身性強皮症 / iPS細胞 / 血管病変モデル / 創薬スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性強皮症は皮膚や内臓の線維化をきたす自己免疫性疾患であり、レイノー症状などの血管障害も認める。すなわち、線維化と血管障害の2つの事象が複雑に絡み合って、症状を来すが、これらの関係は未だ良くわかっていない。また、線維化の機序は解明されつつあるが、血管障害の機序はほとんど明らかになっていない。これは、患者の血管内皮細胞を使った適切な病変解析モデルが存在しないためである。そこで、本研究では全身性強皮症患者のiPS細胞から多様化能力を持った血管内皮細胞を誘導し、その血管内皮細胞を用いて管腔形成を行い、試験管内での血管病変モデルを作製することとした。管腔形成を行うことによって試験管内実験ではあるが、単層培養した血管内皮細胞の解析とは違い、より生体内に近い病態の解析ができる。 今年度は、健常人(2名)と全身性強皮症患者(3名)のiPS細胞からそれぞれ血管内皮細胞の誘導を行った。健常人iPS細胞由来の血管内皮細胞は2名とも問題なく増殖し、凍結保存が可能であった。さらに健常人iPS細胞由来の血管内皮細胞を用いて、管腔形成実験を行った。複数の条件を検討した結果、96wellプレートにおいて1万細胞/wellにて明視野上、最も適切な管腔形成を認めた。 全身性強皮症患者iPS細胞由来の血管内皮細胞は、3名ともiPS細胞からの誘導は問題なかったが、誘導後の増殖能は極めて低く、凍結保存が難しい状態であった。そこで、誘導した血管内皮細胞を保存することなく、そのまま直接、健常人と同じ条件で管腔形成を行ったが、健常人と比較して明らかに管腔形成能は劣っていた。全身性強皮症に関連していると言われるTGF-β1に対する阻害剤(SB431542)を加えても、その管腔形成能は改善しなかった。現在、他の化合物ライブラリーを用いて全身性強皮症患者iPS細胞由来の血管内皮細胞の管腔形成を改善させる物質を検索中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、健常人(2名)と全身性強皮症患者(3名)のiPS細胞からそれぞれ血管内皮細胞の誘導を行った。健常人及び全身性強皮症患者のiPS細胞そのものの維持培養及びiPS細胞から血管内皮細胞を誘導する過程は問題なかった。iPS細胞から血管内皮細胞を誘導後はフローサイトメーターにて適切なマーカーを発現している血管内皮細胞のみを回収した。 フローサイトメーターで回収後、健常人のiPS細胞由来の血管内皮細胞は増殖能に問題なく、管腔形成も認めた。一方、全身性強皮症患者のiPS細胞由来の血管内皮細胞は健常人と比較して、極めて増殖能が低く、管腔形成能も低かった。また全身性強皮症の原因と言われているTGF-β1に対する阻害剤(SB431542)を加えても、全身性強皮症患者のiPS細胞由来血管内皮細胞の増殖能及び管腔形成能は改善しなかった。現在、他の化合物ライブラリーを用いて全身性強皮症患者のiPS細胞由来血管内皮細胞の管腔形成能を改善する化合物を検索中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で、健常人と比較して、全身性強皮症患者のiPS細胞由来血管内皮細胞の管腔形成能が低下していることが明らかとなった。今後は患者のiPS細胞由来血管内皮細胞の管腔形成能を改善させる化合物のスクリーニングを行い、全身性強皮症患者の血管病変の新規治療薬の開発を進める。 また、健常人及び全身性強皮症患者のそれぞれのiPS細胞由来血管内皮細胞からRNAを抽出し、網羅的マイクロアレイ解析を行い、両者を比較し、血管内皮細胞の増殖力及び管腔形成能に影響に与える原因因子を探索する。
|
Causes of Carryover |
今年度は研究室の備え付けの消耗品も使用しつつ、研究を行ったので、ある程度出費が抑えられた。来年度は全身性強皮症患者のiPS細胞から誘導した血管内皮細胞を多量に作製し、患者血管内皮細胞の管腔形成能を改善する化合物のスクリーニングを行う予定である。そのために、多くの培地、血清及び無血清サプリメント、各種誘導因子など用いる。これらは高額なものが多く、次年度使用額はそれらの購入費用として使用する予定である。
|