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2020 Fiscal Year Research-status Report

皮膚由来3次元組織構造体(オルガノイド)の培養法の確立と解析

Research Project

Project/Area Number 19K08801
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

大内 健嗣  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30528419)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords3次元構造体 / オルガノイド / ケラチノサイト
Outline of Annual Research Achievements

昨年までの研究から、野生型マウスの耳介より採取した皮膚から作成した皮膚オルガノイドは基底層側が外側、角化層が内側を向き、内腔に角化物が充満する嚢腫構造を呈し、正常皮膚を模倣した分化を示すことが明らかとなった。また、培養した皮膚オルガノイドの経時的な成長をIncuCyteS3 Live-Cell Analysis Systemを用いて記録したところ、トリプシンを用いて表皮細胞を分離した後、複数個のケラチノサイトの集塊からオルガノイドが発育し、成熟したオルガノイドが形成されることが判明した。
克服すべき課題は、皮膚オルガノイドの長期培養を可能にすることであった。約3回の継代(約1ヶ月)にて発育が停止することが確認されたが、生体外で遺伝子改変による疾患モデルへの応用や薬剤スクリーニングを行うには、腸管由来のオルガノイドのように無限に継代培養が可能であることが重要である。当該年度は長期培養に最適な条件を検討した。具体的には基本的な培養条件にROCK阻害薬を添加し、長期培養が可能かを検討した。
また並行して皮膚オルガノイドの機能的解析を試みた。前年度、タンパク質をビオチン化する試薬を用いて、皮膚オルガノイドの上皮の透過性を評価した。皮膚オルガノイドは外側にはタイトジャンクションを有さないため、表皮細胞間は外側から内腔側のタイトジャンクションまでビオチン化されるはずであったが、表皮細胞間のビオチン化は確認されなかった。皮膚オルガノイドの上皮ならびにタイトジャンクションの恒常性を別の手法で評価すべく、皮膚タイトジャンクションを通過し得ないタンパク抗原であるブドウ球菌の表皮剥脱毒素を使用した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

長期培養に最適な条件を検討した。著者らは2021年に幹細胞のstemness、上皮細胞の恒常性を失った腸管オルガノイドにおいてRho-associated kinase(ROCK)の過剰な活性が起きていることを報告し、ROCK阻害薬の添加により失われた上皮の恒常性が回復することを報告した(Ouchi et al, Cells 2011)。この知見をもとに基本的な培養条件にROCK阻害薬を添加し、長期培養が可能かを検討した。具体的には選択的ROCKⅠ阻害薬である10μM の1-Phenyl-1,2,3,4-tetrahydro-4-hydroxypyrrolo[2.3-b]-7-methylquinolin-4-one(Blebbistatin)、0.31μM の(S)-(+)-2-Methyl-1-[(4-methyl-5-iscquinolinyl) sulfonyl]-hexahydro-1H-1,4-diazepine dihydrochloride(H1152)を培養液中に添加し、継代培養を試みた。結果、継代培養される率は若干ながら改善が見られたが、明らかな有意差をもって改善はしていない。
皮膚オルガノイド上皮の恒常性について、表皮剥脱毒素を用いて評価した。表皮剥脱毒素はそのタンパクサイズからタイトジャンクションを通過する事はできないことが証明されている(Ouchi et al, J Exp Med 201)。表皮剥脱毒素は表皮間の接着分子であるデスモグレイン1を切断するため、培養液に添加した場合、細胞間隙を拡散し、顆粒層での棘融解を起こすはずである。具体的には4μg/mlとなるように表皮剥脱毒素を培養液に添加し1時間培養し、形態変化を確認した。予想に反して、表皮剥脱毒素存在下に培養した皮膚オルガノイドでは内腔側の存在する顆粒層での棘融解は確認されなかった。

Strategy for Future Research Activity

最も克服すべき課題は、皮膚オルガノイドの長期培養を可能にすることである。生体外で遺伝子改変による疾患モデルへの応用や薬剤スクリーニングを行うには、腸管由来のオルガノイドのように無限に継代培養が可能であることが重要である。基本的な培養条件に添加している10μM trans-4-[(1R)-1-aminoethyl]-N-4-pyridinylcyclohexanecarboxamide dihydrochloride(Y27632)を除くと、皮膚オルガノイドは形成されないことから、ROCKの過剰な活性化がオルガノイドの継代培養を阻害していることが予想される。そこで、現在、継代ごとにROCK活性が上昇するか否か、イムノブロットを用いたROCK活性アッセイを用いて評価している。一方で、上皮の恒常性に維持に重要な役割を果たすセリン/スレオニン・タンパク質リン酸化酵素であるプロテインキナーゼc(PKC)に注目している。PKCシグナルの活性化は細胞のミオシンの収縮性の阻害を低下させることで、細胞の柔軟性を阻害することが知られている。PKCシグナル阻害薬はin vitroで細胞の生存率を向上させることが報告されており(Kim et al, Nature 2020、Maghzal et al. Developmental cell. 2013)、様々なPKC阻害薬を培養条件で確認中である。また上皮幹細胞のニッチの重要なメディエーターであるWntシグナル伝達を増強することも計画している。具体的にはWnt/β-catenin シグナル伝達系のリガンドであるWnt3Aの添加により長期培養が可能になるか検討を重ねている。皮膚オルガノイドの機能的解析については表皮剥脱毒素存在下に培養した皮膚オルガノイドにおいてデスモグレイン1が消失しているか免疫染色で確認する予定である。

Causes of Carryover

(理由)長期培養条件を探索するため、培養液に添加する促進因子ならびに阻害因子などは、過去に購入した試薬を使用することで賄うことができた。当該年度はRecombinant R-Spondin 1やマトリゲル 基底膜マトリックスを中心に購入することになった。全体的に効率よく物品調達を行うことができたため未使用金が発生した。

(使用計画)長期培養条件を探索するため、培養液に添加する上皮幹細胞のニッチ因子の促進ならびに阻害因子を購入する予定である。

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Published: 2021-12-27  

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